名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ

2016.10.18

賃貸物件での孤独死は管理会社の責任になるのか？

おはようございます。名古屋の遺品整理・特殊清掃専門第八行政書士事務所の谷です。

めっきり朝が寒い名古屋です。事務所で使用するスリッパが今年の初めに擦り切れてしまいましたので新しいものを新調。最近はスリッパも丸洗いできるんですね。

さてさて、当事務所には日本全国から賃貸物件での孤独死や自殺に関しての相談が掛かってきます。そのほとんどが相続人や大家さんからだったりするのですが、ごく稀に孤独死や自殺があったお部屋の隣室に住んでいた方からの相談などもあったりします。

今回はそんなお隣さんからのご相談。（わかり易くする為に相談内容には一部加工を施してあります。）

相談内容としては、隣室で孤独死が発生して臭いが酷く引越しを考えている。その引越し費用を管理会社に請求できるのか？というものです。

電話で聞く限りで回答するには難しい質問ではあります。その賃貸物件の所有形態（自社所有なのかサブリースなのか、管理業務だけなのか）やご遺体が発見されるまでの経緯、実際に被った被害の状況など色々な事が複雑に絡んでおり問題が難しくなっています。

基本的な考えから申し上げれば、管理会社の管理責任を問題にして引越しに掛かった費用を請求するのは難しいのではないかと思われます。そもそも、入居者の方が亡くなり、それによって生じた被害があるのでしたら本来は故人の相続人へと請求するのが一般的な流れと言えるでしょう。

しかし、今回のご相談では故人の死因は持病から来る突然死（孤独死）であり、その死亡には故意も過失もありませんので、そもそも損害賠償が請求できないと考えられる事案でもあります。

では、相続人に請求できないのなら管理会社へ請求できるのか？というとそうとも限りません。管理会社としては賃貸物件を入居者の居住に適した状態に維持管理する責任はあるでしょうが、入居者の孤独死を事前に防いだりする義務は当然無く、また無理な話しでもあります。

強いて言うのなら、隣室の住人などが異臭やハエなどの害虫の発生を不審に思って管理会社に状況を確認するように通報しているのに管理会社が全く対処していないような状況。

こういった場合は管理会社がずるべく管理をしていなかったとも言えますので管理会社の管理責任を理由に被害が拡大したとして引越しの費用などを請求できるかもしれません。

ただ、一般的な管理会社でしたらそうした状況を放置することはないでしょうから、入居者からの連絡→家族又は警察への連絡→現場確認といった流れになっていくでしょう。

そうした管理会社として行うべきことを放置せずに行っていれば管理会社の責任を問われることは少ないとは思いますが、孤独死や自殺が起きた場合などは隣室の入居者の方などのストレスはとてつもないものであり『早く通常の生活状況に戻してくれ！！』と募る苛立ちを誰かにぶつけなくてはやっていられないといった状況でもあります。

被害を受けている入居者には、故人の相続人などの連絡先は知りようもなく、唯一取れる連絡先といえば管理会社ということとなり、結果として苦情の矢面に立たされるのが管理会社の社員の方々ということになってしまうわけですね。私も以前は賃貸物件の管理会社に努めておりましたのでこのご苦労は非情に良くわかります。

遺品整理や特殊清掃を行っているとそうした死臭やハエなどの虫の被害に遭われている隣室の方の状況確認やサポートを行ったりする事も多くありますが、こうした方々が管理会社へと不満を募らせる一番の原因が『今どういう状況になっているのかが分からない』これが事故物件などで被害を受けている入居者の方が一番腹を立てる原因とも言えるものです。

この状況はいつ解消するのか？いつまで我慢しなければいけないのか？そうした情報が入ってこないのが入居者にとっては不満を募らせる原因であり、管理会社が管理責任を果たしていないのではないかと疑われるところでもあります。

実際の管理会社側としては、亡くなった方の個人情報（相続人の連絡先など）をみだらに教えるわけにもいかず、清掃などを行おうにも相続人を無視して勝手に行うこともできません。

また、相続人と連絡が取れるまでに時間が掛かったり、連絡が取れたとしても相続放棄をされてしまったような場合は遺品の取り扱いについてどうするのかという問題も出てきます。

管理会社としては、するべく業務をしていたとしても、その進捗状況が被害に遭っている入居者には分からない為、どんどんと怒りを募らせてしまう結果となってしまっているというわけですね。

実際、真夏に孤独死や自殺が起きたような場合に発見が遅れて遺体が腐乱してしまうとその死臭やハエなどの被害は耐え難いものがあります。

これは実際にその部屋に住んでいる住人でなければ分からないものであり、酷い状況ですと臭いのせいで食事はもちろん睡眠をとることも満足には出来ず、倒しても倒しても涌いてくるハエにはうんざりするばかりです。

仕事から帰ってきて玄関を開けたら廊下がハエで一面真っ黒に、、、こんな状況耐えられませんよね？被害に遭われている入居者が怒るのも仕方がないというものです。

ですので、孤独死や自殺が起きたことによる直接の責任は管理会社にはないかもしれません。しかし、その後の対応を間違えると管理会社の管理責任をめぐって入居者の方と揉めてしまうことにもなりかねません。

孤独死や自殺が起きたような場合は管理会社の社員の方にとってもどのように対応したらいいのか分からないことも多いでしょうし、相続人への電話連絡もし辛いこととは思われます。

しかし、後回しにしても被害が大きくなるばかりで解決には向かいませんので、取れる連絡は素早く取り、その他の入居者へはなるべく丁寧に事情の説明をしていきましょう。

もちろん、故人の情報の取り扱いについては注意を要しますが、被害に遭われている方が知りたいのは故人の亡くなった状況ではなく、自分達の平穏な生活がいつ戻ってくるのか？この一点に尽きます。

遺品整理や特殊清掃を行うような場面では相続放棄の問題なども絡んでどのように対処したらいいのか？と悩んでいるうちに有効な手を打てずに、ただ時間だけが無駄に過ぎていってしまうというケースが多く見受けられます。

そんな場合は当事務所にご相談ください。相続人が相続放棄をする場合であっても打てる有効な手段はあります。

まずは死臭や虫の被害を抑えて隣室階下の苦情を解決するのが第一で、苦情の元を断つことによって落ち着いて考える時間も作ることができるようになります。

賃貸物件で孤独死や自殺などが起きてしまうと、相続人と入居者の板ばさみにされるのが管理会社の社員の方です。困った場合はご相談くださいね。