名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ

2017.03.03

いとうまい子さんのブログについて

 おはようございます。名古屋の遺品整理・特殊清掃専門第八行政書士事務所の谷です。

3月に突入しましたね。世間では大学生の就職活動が本格的に始まっていますが、今年は引き続き売り手市場のようで就職活動をされている学生さんにとっては追い風のようですね。

私が大学生の頃は毎年のように氷河期、氷河期、超氷河期と就職活動は活発なれど希望は見えずといった暗い雰囲気だったのを覚えています。ですので、私の周りでは一般企業への就職活動ではなく公務員試験を目指す学生が多かったように感じます。最近は働き方について色々な考え方もあるようですが、過労死なんてことにだけはならないでくださいね。

さてさて、先日ネットニュースの記者の方から電話でコメントを求められてお答えしていたのですが、記者の方が法律に詳しくないようで、どうにもこちらで伝えてことの半分も伝わっていないようで、こちらのコメントをつぎはぎしたような記事になっており、ちょっと誤解を招きそうな部分があったので、自分のブログで訂正も含めて今回の事案について考察してみたいと思います。

ことの発端はいとうまい子さんのブログ。いとうまい子さんのご家族が賃貸物件で亡くなり、不動産会社よりフローリングの張替え費用120万円を請求されたことや、心無い言葉によって様々な嫌がらせを受けたことをブログで報告されていました。いとうまい子様やそのご家族の皆様にはお悔やみ申し上げるとともに故人様のご冥福をお祈り致します。

では、今回の事案について少し考察してみたいと思います。ネットニュースなどのコメント欄では色々な意見も出ており、かなり混迷した様相でした。

今回問題となっているのは貸主側の不動産会社の対応についてです。いとうまい子さんのブログを拝見するかぎり、遺族に対する思いやりは感じられない対応だったことは想像できます。賃貸物件で自殺や殺人などの事件が起きてしまうと事故物件の扱いとなり、貸主側としては大変な痛手となりますので、怒りたい気持ちもわかりますが、これではその後の話し合いもうまくいかなくなることでしょう。

事実、ブログの最後には「反社会的勢力よりタチの悪い不動産会社には負けないからね--!」と書かれており徹底攻勢の様相となっています。

では、今回の事案の処理としてはどのような点について考えなければならいのでしょうか。主に次のようなことが要素として挙げられます。
・自殺か自然死か
・いとうまい子さん又はそのご家族が連帯保証人だったかどうか
・原状回復の責任と損害賠償(逸失利益)の責任を負うのかどうか

まず、自殺か自然死かについて
一般的に事故物件と呼ばれるケースには、自殺、殺人、火事による死亡などがあり、自然死は事故物件には含まれないと考えられています。では、自殺は事故物件となり自然死は事故物件とはならないのは何故か?

自殺や殺人などはその状況からして一般的人が気持ち悪いと思う気持ちを喚起させます。自然死の場合は単に亡くなった時点で周りに誰もいなかっただけということであり、判例などでも生活の場として使用している以上は老衰や病死などが起きるのは当たり前のことと示しています。

問題となるのは、夏場などに発見が遅れて遺体が腐乱してしまったようなケースです。いくら自然死とはいえ遺体が腐乱してしまったようなケースですと、一般人としても腐乱した遺体があった部屋には住みたくないと思うのは当然の気持ちかと思います。そういう意味では自殺のようなケースと同じとも言えるかもしれません。

問題はその遺体が腐乱したことによって発生する原状回復の費用や入居者が決まり辛くなるといった不利益を貸主側と借主側がのどちらが負うのか?ということになります。

自殺のようなケースですと入居者が自分の意思で自傷行為を行い、その結果死亡して、部屋が汚損されたり、入居者が決まり辛くなるといった不利益が発生しています。つまり、入居者に故意や過失(入居者に責任)があったということになります。

判例などでは入居者の善管注意義務違反(生活する為に貸している部屋を自殺という行為に使用するといった、本来想定していないような使い方をした)を理由に入居者側に賠償責任を認めています。これについてはわかりやすいですよね。

では、自然死の場合はどうなるかというと。自然死の場合はその死亡は老衰や急な体調不良、病気などが原因となります。ですので、入居者としては死にたくて死んだわけではないのですから、その点については自殺の場合とは異なり故意や過失はありません。つまり、死亡やそれに伴って発生する不利益に対して入居者には責任がないということです。

このことから、自殺のような有過失のような場合は入居者側が不利益に対する賠償義務などを負い、自然死(遺体が腐乱したような場合も含む)の場合は貸主側がその負担を負うと基本的には考えられます。

※昭和58年の判例では腐乱した遺体のケース(自然死)で逸失賃料の責任は無いが原状回復費用を認めたものはあります。ただし、ガイドラインもない時代の判例なので今後出てくる判例では結果が異なることも予想されます。もし、近時の判例で自然死で遺体が腐乱したケースの明確な判例があればお知らせ頂けると助かります。

次に、いとうまい子さんやそのご家族が賃貸借契約上の連帯保証人だったかどうかについて
これは何かというと、賃貸借契約の際に家族が連帯保証人になっているケースは多いと思われますが、最近は家賃の保証会社の利用も多く、家族は緊急連絡先にしかなっていないということも珍しくは無くなってきています。

もし、相続人が連帯保証人になっていないのでしたら、相続人は相続放棄をすることによって故人が負っていた負債などの支払い義務を免れることができます。(プラスの財産も承継できなくなります)

つまり、不動産会社から何を言われたとしても「相続放棄しましたので」の一言で全て終わってしまい、原状回復費や遺品整理の費用などは全て貸主側の負担となってしまうということです。相続放棄の場合は貸主側が勝手に遺品整理を行うこともできないといった制約もありますので、貸主側としてはかなり困った事になります。

最後に原状回復と逸失利益についてですが、上で述べたように相続人が連帯保証人になっていないケースではなく、相続人が連帯保証人となっていた場合は賃貸借契約においては故人と同一の立場で責任を負うこととなります。

ですので、未払い家賃の支払い義務や部屋の明け渡し義務、原状回復義務などが発生するということです。これに加えて自殺のように過失があるケースですと、その後に入居者が決まり辛くなることによって発生する逸失賃料(事故が発生しなければ満額の家賃が貸主はもらえたのに、事故のせいで家賃を半額にしなければいけなかったなど)についても負担を負わなければいけなくなるのが一般的です。

では、今回の事案のように自然死のケースはどうなるのでしょうか。まず、家賃を減額しなければいけなくなったことによって発生する逸失賃料などについては、国土交通省のガイドラインが無い時代の判例であっても認めていません。なぜなら、自然死の場合は故意も過失もないのですから、故人にはなんら責任がなく、責任のないことに対して賠償請求はできないからですね。

なら、原状回復についてはどうでしょうか。自然死の場合は発見が早いケースと発見が遅れて遺体が腐乱してしまっているようなケースに分かれます。ただ、遺体の状況というのは発見されるまでの日数、発見が早くても猛暑の季節などでは遺体が腐乱してしまうケースなどから季節も影響してきて明確にどこからどこまでを心理的瑕疵のある状況と判断するのかは難しいのが現状です。

したがって、自然死の場合、特に遺体が腐乱しているようなケースでは弁護士の間でも意見が別れているようですが、私自身としては、死亡の原因に故意や過失が無い以上は遺体が腐乱したことによって発生する不利益を入居者側に負わせることは出来ないと考えています。

ですので、自然死で遺体が腐敗してしまうようなケースでは当然、原状回復費用や次の入居者が決まり辛いといった不利益は事実上発生しますが、それは入居者側が責任を負うのではなく貸主側が賃貸経営を営む上での経営上のリスクとして考えるべきものであると考えます。

事実、そういったリスクに備える為に現在は孤独死や自殺のような一般的に事故と言われるような事が発生することに備えた保険も各社から発売されていますので、貸主側としては入居者側に請求するのではなく、超高齢社会に備える自衛の心構えが必要ということですね。

今回の事案を通して思うのは、不動産会社さんの初期対応のまずさです。遺品整理を行っていると様々な現場に出くわし、中には凄惨な状況となってしまっている賃貸物件というのもあります。

そういった際に遺族の多くが「大家さんには迷惑を掛けてしまった」「できる限り家族としての責任は果たしたい」と考えていらっしゃいます。

ただ、そうは思っていたとしても、今回の事案のように最初から頭ごなしに、文句や苦情、原状回復費などのお金の請求をされてしまうと当然家族としても反発したい気持ちも生まれてきてしまいます。そうなっては纏まる話も纏まりませんよね。(実際に不動産会社の方がどのような対応を取られていたのかは一方の視点からだけですので、判然とはいたしませんが、、、、)

全ての方とは言いませんが、遺品整理を行われる遺族の多くが上で述べたような気持ちで遺品整理に臨まれています。ご家族としても別に苦情を言いたいと思っているわけではありません。迷惑を掛けている相手から故人を想う言葉を掛けてもらえればどれだけ救われることでしょうか。

遺品整理の現場で大事なのは、まずは正しい知識と感情的にならず落ち着いて話し合いを行おうという気持ちです。遺族の側としては故人の死に直面し冷静な判断というのは難しい状況ですので、不動産会社や大家の皆様から手を差し伸べて頂けたらと思います。

その他
ネットニュースの当事務所のコメントとして、「自然死した場合でも修繕費用など借主が負っていた義務を果たす必要があるが、、、」とありますが、これでは言葉足らずで誤解を生みそうなので補足として、自然死の場合であってもこれまでの入居期間で生じた傷や汚損についてはガイドラインに沿った修繕義務は負うが、自然死の結果発生した汚損などについては入居者側には責任はないということです。

次の「明確な判例がないためはっきりとはいえませんが、、、」との部分では、一部コメント欄には「心理的瑕疵に関する判例はたくさんある!」というコメントがございますが、確かに心理的瑕疵に関する判例はたくさんあります。ここで述べているのは、自然死の場合でしかも遺体が腐乱してしまったような場合に遺族側に賠償責任を認めている明確な判例がないと言っているわけで、単に心理的瑕疵に関する判例がないと言っているわけではありません。もし、自然死の場合で遺体が腐乱したようなケースでの判例がございましたら情報提供をお願い致します。

最後に「谷代表が関わった案件に3LDK、、、、」という文章がございますが、私は関わっておりません。これは過去の判例において浴室で起きた自殺と原状回復の範囲について、こういった判例があったということを電話質問の際に答えただけで、記者の方が勘違いして書かれていると思われます。

こうやって見るとこちらの意図と記者の方が受け取って書いた記事にはかなりの乖離がみられますね。これからは公表される前に一度チェックさせて頂かないと余計な混乱を生むかもしれませんね。反省しております。

名古屋の遺品整理・特殊清掃専門 第八行政書士事務所 代表 谷 茂

第八行政書士事務所は名古屋を中心に東京、大阪など全国で遺品整理・特殊清掃のご相談を受け付けております。

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