名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ
2019.06.14
賃貸物件での孤独死に関する相談の増加
おはようございます。名古屋の遺品整理・特殊清掃専門第八行政書士事務所の谷です。最近はちょっと涼しくも感じる名古屋ですが、これは梅雨に入り雨や曇りが多いからなのかなと感じています。本格的な夏はもう目前ですので、いまのうちに暑さに体を慣れさせておき、真夏に熱中症で倒れないように準備していきましょうね。
さて、そんな夏目前の時期ではありますが、二週間前位は季節はずれの真夏日が連日続きかなり暑かったですよね。それが原因とも限りませんが、賃貸物件で孤独死されたご遺族の方からのご相談がここ数日連続で入っています。
今日はこれまでのブログでも何度も書いてきていることではありますが、本格的な夏を目前に控えたのこの時期にもう一度、賃貸物件で孤独死が起きた場合に相続人の方々が注意するべきポイントをおさらいしておきたいと思います。
孤独死の報せはどのように届くのか?
賃貸物件で孤独死が起きた場合に家族や遺族のもとにはどのように連絡がはいるのか?一般的なイメージだと病院から?と思われている方も多いかと思いますが、そうではありません。
孤独死で発見されるケースには
①親族が訪ねてきて亡くなっているのを発見
②最近姿を見ていないからとご近所の方が役所や警察へ連絡して発見
③市と見守り活動で提携している新聞配達員の方などが長期間取り込まれていない配達物を不審に思って、役所や警察へ連絡して発見
④上記の事由での発見に至らず、遺体が腐敗したことによる「死臭」やハエなどの「害虫」の発生を隣人や階下の住人が不審に思い、管理会社や警察へ連絡して発見、といった感じで発見されます。
ですので、病院で死亡が確認されるというケースよりも、賃貸物件の室内で亡くなった状況で発見さるケースがほとんどですので、まずは警察が現場検証や検死といった作業を行い、その後室内の貴重品関係を警察がざっと捜索して引き上げた後、遺族の方を捜索してご連絡が入るといった流れとなります。
この際、警察は直近の相続人(故人が結婚されている場合、配偶者や子)に連絡をしてくると思いますが、必ずしもこの連絡の順番は相続順位に従ってはおりません。
ですので、お子様や配偶者がいたとしても、別の親族である故人のご両親の方が先に連絡先が判明したような場合は、そちらにご連絡が入るということも十分考えられます。
賃貸で孤独死が発見され警察から連絡が入ったらまずどうする?
警察から連絡が入ったらまずどうするか?
まずは「落ち着く」ことです。警察からの連絡は当然のことながら予告なくかかってきます。ですので、ご親族が亡くなったと聞かされれば慌ててしまうのは仕方がないことですが、まずは落ち着きましょう。
ケースによっては、子供の頃に一度か二度あったかどうかという、おじさんやおばさんが亡くなったので、大家さんに連絡して遺品整理等を進めてくださいと言われて困惑する方もいるかと思いますが、こちらも一旦、状況を整理してから動く必要がありますので、慌てて行動しないようにしましょう。
警察からの連絡では主に、
①故人が亡くなったこと
②遺体と貴重品の引取り
③家主や管理会社への連絡
④DNA鑑定が必要な場合はその旨
といった事を伝えられるかと思います。④に関しては遺体が腐乱しているようなケースではDNA鑑定で遺体が本人かどうかを確認する事も多く、これには多少時間が掛かる地域もあります。
では、こうした場合にどのように対応するのか?
一般的な流れであれば警察へ遺体を引き取りにいき、同時に貴重品の返却などをしてもらい、併せて葬儀業者さんなどに当日来てもらい遺体を運んでもらい、その後は葬儀等の流れになります。
故人と連絡を受けた方との関係では、そもそもそんな連絡をもらっても困る、故人とはほとんど面識がないし、状況も良くわからないという事もあるかと思われ遺体の引取り自体を拒否したいということもあるでしょう。
そうした場合は、遺体を引き取りをしたくない事をそのまま警察の方へ伝えましょう。(親族だからといって必ずしも遺体を引き取らないといけないという訳ではありません。)
孤独死が起きた場合に故人の支払いを行う際の注意点
賃貸物件で孤独死が起きた場合に注意する必要があるのが、故人の財産を処分するかどうかです。これは故人の遺品整理などを行う際にも注意が必要です。
賃貸物件で孤独死が起きた場合はその後、大家さんや管理会社さんとの原状回復等の費用がいくらかかるか?といった話し合いが必要になってきます。
そうした場合に多額の原状回復費を負担することはできないからと「相続放棄」を選択する方も珍しくはありませんが、この相続放棄をする上では、故人の財産を処分してはいけないという条件があります。
故人の財産処分として典型的な例としては、「故人の遺産である現金を使って遺品整理を行った」「室内に残されていた高価な家財やブランド品などを売却した(捨てた、誰かにあげた)」などがあります。
よくやってしまいがちな失敗が、警察から返却された財布や故人の通帳に残っていたお金を遺品整理などの支払いに充ててしまうことです。(葬儀費用については故人の財産を使用しても一般的には相続放棄には影響しないと考えられていますが注意が必要です。)
ですので、故人に関するなにがしかの支払いが発生しているような場合に、相続放棄を検討している状況でしたら故人の財産は使用せずに、ご自身のポケットマネーで支払う方が安全です。
賃貸物件での孤独死の際の家主や管理会社からの請求について
賃貸物件で孤独死が起きた場合に一番、遺族や相続人が頭を痛めるのが、家主や管理会社さんからの多額の請求をどうするかという問題です。
家主や管理会社の方から連絡が入った際にまず確認して欲しいのが次の事項です。
①相続人は誰で自分はどの順位の相続人なのか?
②賃貸借契約上の立場(連帯保証人・相続人・緊急連絡先)
③故人の賃貸契約に家賃の保証会社が付いているかどうか
①については、相続が発生した場合に相続人には順位があり、必ずしも連絡受けた方が現在の相続人であるとは限りません。
相続の順番としては
第一順位 故人の配偶者と子(直系卑属)
第二順位 故人のご両親(直系尊属)
第三順位 兄妹姉妹
例えば、故人のご兄弟が警察から連絡を受けて、連絡を受けたご兄弟が遺品整理や相続放棄を考えたとしても、故人に第一順位や第二順位の相続人がいる場合は、第三順位のご兄弟はいまだ相続人ではありませんので、故人の相続に関してはなんら決定権を有していません。
ですので、故人に分かれた奥さんとの間にお子さんがいたような場合は、奥さんとは離婚していますので、奥さんは相続人からは外れますが、お子様がいる場合はお子様が元奥様の戸籍に入っていたとしてもお子様は相続人でありますので、まずはこのお子様が相続人としての権利義務を有することとなります。
つまり、遺品整理をしようと思ってもお子様が第一順位の相続人である以上、第三順位のご兄弟が勝手に遺品を処分してしまうというのは基本的には避けるべき行為となります。
もちろん、相続順位に関わらず、相続人間で話し合いができており、相続人の代表として第三順位のご兄弟が実際の手続きを進めていくのはなんら問題はありません。
ただし、相続放棄に関しては第一順位の方~第三順位の方が一度に手続き進めることはできませんので、第一順の方から順番に進めていく必要はあります。
②について
故人の賃貸借契約において、相続人の方がおかれる立場にはいくつか種類があります。まず相続人の方が全員該当するのが、そのものずばり「相続人」という立場です。相続人は賃貸借契約に関わらず、故人に発生した相続に関する全てにおいて「相続人」となる一般的な立場です。
それ以外が「連帯保証人」と「緊急連絡先」
「連帯保証人」は賃貸借契約の契約者である本人(故人)と同列の責任を負う方となります。ですので、賃料の未払いや原状回復に関する責任についても故人の代わりに負う必要のある方となります。連帯保証人の立場は相続とは別の家主側と結んだ契約となりますので、相続放棄をしたとしても連帯保証人の責任を免れることはできません。
「緊急連絡先」は賃貸借契約において契約者本人になにかあった場合に連絡する連絡先であり、これ自体にはなんら責任を負うものではありません。ですので、極端な話し、家主などから原状回復費用等の請求があったとしても「私は連帯保証人でもありませんし、相続も放棄しましたので、お支払いはいたしません」と言うことが可能です。(相続人の場合は支払いを断るなら相続放棄の手続きは必須)
まとめると
「相続人」は3ケ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを取っていなければ、相続人の立場で賃貸借契約上の責任を負うことになる。相続放棄を行っていれば、なんらの責任を負う必要はなくなる。(ただし、プラスの財産も承継できなくなる)
「連帯保証人」は相続放棄をしたとしても、連帯保証人の立場で賃貸借契約上の責任を負うので、契約者本人(故人)と同じ責任を負うことになる。
「緊急連絡先」は万が一の連絡先という意味でしかないので、基本的には賃貸借契約上の責任はなんら負ってはいない。ただし、相続人の場合は何もしていないと相続人の立場で責任を負う可能性が出てくるので、緊急連絡先であっても「相続放棄」が必要な際は必ず行っておく必要がある。
その他の詳細について
ここまでは、賃貸物件で孤独死が発生した場合の注意点と確認事項だけを簡単の解説しました。ただ、ここで記載しているのは一般的に事故物件と呼ばれる状況の入り口の解説ですので、より詳細な内容を確認したい方は下記のリンクよりそれぞれの詳細をご確認ください。
賃貸物件で孤独死が発生した場合の遺族向け解説
◆「賃貸物件で孤独死・自殺をされた方のご遺族や連帯保証人が取るべき方法」
相続放棄を代行で依頼する場合の解説
◆「相続放棄手続きの代行業務について」
これまでに出た自殺や孤独死に関する判例の紹介
◆「自死・孤立死賃貸物件判例集」
相続放棄を検討されている方の注意点について
◆「相続放棄をする前に」
一般的な賃貸物件における原状回復に関する解説
◆「原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを超解説」
賃貸物件で自殺が起きた場合の考え方や対処をまとめています
◆「賃貸物件での自殺に関する質問集」