事故物件現場に関する考え方及び過去の判例

孤独死(孤立死)や自殺が起きてしまった部屋での原状回復や損害賠償請求について一般的な考え方や過去に出された判例の一部を載せております。


家主から高額な原状回復費用や損害賠償を請求される恐れがある場合、または今現在さ
れて困っているという方は
賃貸物件で孤独死・自殺をされた方のご遺族や連帯保証人が取るべき方法
をご参照ください。
相続放棄の手続き代行をご希望の方は「相続放棄手続きの代行業務について」をご確認
ください。
大家や管理会社の方は「事故物件で大家や管理会社が取る手順」をご確認ください。

孤立死(孤独死)などの自然死を原因とする場合

一般的に連帯保証人は、マンションなどの賃貸借の場合、借主が負っていた賃料などの支払い義務を連帯して負うことになり、明渡し後の原状回復の義務の責任も負います。

つまり、借主が自然死した場合でも、連帯保証人は借主が本来負っていた義務をそのまま果たす義務があります(部屋の荷物を撤去して明け渡したり、修繕費用を払ったりなど)。

ただし、貸主側が自殺や孤立死(孤独死)が起きた事を原因として、次の入居者の募集にあたり家賃を減額する必要があるとする、逸失利益の損害賠償請求については、自殺の場合には認められる事がありますが自然死のような場合は人が亡くなること自体は、人間が居住していく上で避けられない出来事であり、借主に故意・過失があるとみなす事は出来ないので、特別な事情が無い限りは遺族や連帯保証人がその負担を負う必要な無いと考えられています。(ただし、下記の注目判例に注意)

原状回復については、過去の判例(東京地判昭和58年6月27日、東京地判 平成29年9月15日)において賃借人が病死し、腐乱した状況で発見された事案で賃借人の相続人の逸失賃料の賠償責任は無いが、原状回復義務を認めた事例があります。

注目判例
上記の昭和58年、平成29年の判例とは別に平成29年の東京地裁判決では「餓死」による事件性のない入居者の死亡で、死後1ヶ月程経過してから腐乱した状態で発見された事案において高額な原状回復を認めただけでなく、逸失利益についても認めた判例が出ています。

したがって、これまでは孤独死のようなケースでは請求できないと考えられていた逸失利益についても今後は遺体の腐乱状況や室内の状況によっては逸失利益についても一概に否定されるわけではないことに注意が必要です。

国土交通省のガイドラインについては
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを超解説」をご確認ください。

その他の参考判例 (RETIO. 2011. 7 NO.82他より抜粋)

平成29年 東京地裁判決

概 要       事件性のない入居者の死亡であっても、遺体の腐乱状況から室内をスケルトンにした上での大規模な修繕及び心理的瑕疵による逸失利益を認めた事例
物件・賃貸状況 物件:住居 賃料7万 管理費1万
事 案 入居者が餓死により死亡し、死亡後1ヶ月程経過してから腐乱した状況で発見された。賃貸人は遺体の腐乱状況と室内の汚損状況から約654万円の原状回復費用と約136万の逸失利益による損害賠償を請求した。
裁判所判事 汚損状況や原告の対応等に照らすと、本件貸室を居住に適した状態に回復するには一旦スケルトン状況にした後、設備の交換や床板の張替え等を実施することはやむを得ないといえる。
入居者が死後約1か月後に発見されたことによる心理的瑕疵を踏まえた本件貸室の新規賃料額は、これらの事情に照らせば、賃貸不能期間1年、割引賃料2年でなければ賃貸し得ない期間と捉えるのが相当である。(裁判所判事は要約してあります。)

平成29年 東京地裁判決

概 要        賃貸物件で死後2ヶ月半経過した孤独死の遺体が発見。貸主側が相続人の両親に対して原状回復費用と逸失利益としての損害賠償を求めた事例
物件・賃貸状況 物件:住居 賃料10万 契約期間2年
事 案 入居者が死後2ヶ月経過した後に発見。遺体が腐乱してたことにより死臭が残るなどして、大掛かりな原状回復が必要として貸主側より相続人の両親に対して、原状回復費用約63万と逸失利益として約85万を請求。相続人の両親は相続放棄をする。
裁判所判事 相続人の相続放棄は熟慮期間経過後の相続放棄として無効。遺体が2ヶ月半方費されたことにより死臭が残るなどしたため、大掛かりな原状回復が必要となり、原告の請求には理由がある。逸失利益等の損害賠償については、自殺ではなく、本人にも自分が病気で死亡するという認識をしていたとは考えられないから、入居者本人に善管注意義務違反は認められない。よって、原告の請求する逸失利益等の損害賠償は認められない。(裁判所判事はサイト用に要約してあります。)
平成19年 東京地裁
概 要      
老衰や病気等による借家での自然死については、当然に賃借人に
債務不履行責任や不法行為責任を問うことはできないとされた事例
物件・賃貸状況 物件:住居(賃借人-法人・借上げ社宅) 賃料:9万8千円/月
事 案
賃借人の従業員が建物内で脳溢血により死亡しているのが、死亡4日後に発見された。賃貸人は建物の価値下落の損害を負ったとして、賃借人に対し587万円余の損害賠償等を請求した。
裁判所判事
借家であっても人間の生活の本拠である以上、老衰や病気等による自然死は、当然に予想されるところであり、借家での自然死につき当然に賃借人に債務不履行責任や不法行為責任を問うことはできない。そして、死亡4日後の発見が賃借人の債務不履行等であるとは認められないことから、賃貸人の請求を棄却する。

平成18年 東京地裁

概   要      
賃貸アパートにおいて、建物の階下の部屋で半年以上前に自然死があった事実は、瑕疵に該当しないとされた事例
物件・賃貸状況 物件:ワンルーム(木造アパート2階建4戸の一室)
東京都世田谷区賃料:6.8万円/月
事 案
賃借人の階下の部屋で半年以上前に自然死があった。賃借人は、入居にあたり当該事件を告知する義務があったとして、賃貸人及び仲介業者に対し、入退去に関する費用及び慰謝料合計94万円余を請求した。これに対し、仲介業者は当該事件について事前に告知したと反論した。
裁判所判事
本件建物の階下の部屋で半年以上前に自然死があった事実は、社会通念上、賃貸目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的欠陥に該当しない。よって、賃借人請求を棄却する。

自殺が起きた物件の裁判上の取り扱い

自殺が起きた部屋というのは心理的瑕疵に当たるとされます。
心理的瑕疵とは通常人又は社会通念上において心理的に嫌悪する事由(気持ち悪いと思う事柄)であるということです。

そのような心理的瑕疵にあたる行為を借主が行った場合、相続人や連帯保証人は損害賠償の責任を負わなければならなくなる場合があります。

損害賠償の範囲

自殺したことが原因で生じたと思われる損害は損害賠償の範囲になるとされています。(浴槽で自殺した場合のユニットバスの取替えや遺体が腐乱した場合で悪臭が部屋に付着した場合のクロス張替え、供養費用等も認められる傾向にあります)

但し、自殺した部屋のリフォーム代金が全て認められるわけではなく、浴槽で自殺した場合などで臭いなどは発生していない場合に別の部屋のエアコンの交換費用等は認められないなど、その現場の状況により認定される損害の範囲は異なってきます。さらに詳しく

逸失利益の考えについて

自殺が起きた場合の賃貸物件における逸失利益とは、本来なら正規の家賃で募集して家賃収入を得られたのに、自殺が起きた事により、家賃を減額しなければ次の入居者を決められないなど、本来得られたはずの利益が入居者の行為が原因で得られなくなり、その失った部分を逸失利益と考えます。

賃貸物件において自殺があった場合の逸失利益については具体的な算出方法はないため、裁判所にて認定されるケースが多くなります。

また、賃貸物件での逸失利益の考え方においては、その物件の間取り(学生向けかファミリー向けか)や立地条件(駅が近いか、繁華街かまたは人気のない所か)などを考慮して、次の入居者が決まりやすいかどうかなども含めて算出されることになります。さらに詳しく

心理的瑕疵の稀釈について

心理的瑕疵(社会通念上、気持ちが悪いと思う感情)は年月とともに稀釈(薄まる)ものと考えられ、そのスピードは物件の性質や立地の条件に左右されます。

大都市にあるワンルームマンションで学生向け、駅や繁華街の近くにあり、隣近所との付き合いは無いといった条件においては、たとえ賃借人が自殺をしたとしても、その事実を知る人間は限られる事になりますし、また物件自体にも需要があるため次の入居者は決まりやすくなります。

つまり、たとえ自殺が起きたとしても、その物件に対する嫌悪感は間取りや立地条件により心理的瑕疵と考えられる期間は短くて済むと考えられるということです。

心理的瑕疵と考えられる期間が短い分、損害の範囲(逸失利益)も抑えられる結果となります。

判例上、逸失利益の期間はだいたい1年~4年位(自殺の状況や物件の状況による)で考えられています。これに合わせて、宅建業法上の次の入居者への告知義務もこの期間に合わせて必要なくなると考えられますが、実務上はこれより長く期間を取っている場合が多いと思われます。

これまでに出された主な判例とその解説

※一般財団法人不動産適正取引推進機構発行の機関誌RETIOの掲載には掲載許可を取得しています。

東京地判平13年11月29日
単身者向けのアパート(仙台市内)を会社が社宅として借り上げをしていたアパートで社員が自殺(契約期間2年 月額賃料4.8万円 敷金8.6万円)


賃貸人(貸主)は10年間の賃料差額相当額288万を請求したが、裁判所は2年間分の賃料差額分の約44万円を損害と認めた事例。
(この判例では貸主は2年程度の期間が経過すれば次入居者への告知義務は必要ないとされた。)


詳細をお知りになりたい方は下記のPDFをご覧ください。
(PDFデータ RETIO55)
一般財団法人 不動産適正取引推進機構 機関誌 RETIO 55 

東京地判平19年8月10日東京(世田谷区)の単身者向けアパートで自殺
(契約期間2年 月額賃料6万円 敷金3.5万円)


賃貸人(貸主)は当該部屋とその両隣及び階下の3部屋の6年間分の賃料減収分として約677万円を借主の相続人及び連帯保証人に賠償請求。
裁判所は自殺のあった部屋のみ3年間の逸失利益として約132万円の賠償責任を認めた事例。
(この判例では、自殺後の最初の賃借人へは告知義務があるが、その者が極短期間で退去したといった特段の事情がない限り、次の賃借希望者へは告知義務はないとされ、また当該部屋以外への入居希望者に対しても告知義務はないとされた。)


詳細をお知りになりたい方は下記のPDFをご覧ください。
(PDFデータ RETIO73)
一般財団法人 不動産適正取引推進機構 機関誌 RETIO 73 

東京地判平22年9月2日東京(世田谷区)の単身者向けアパートで本来の借主から又貸しを受けていた者が自殺
(契約期間2年 月額賃料12.6万円 敷金25.2万円)


賃貸人(貸主)は賃料差額相当額と原状回復費合わせて535万円を請求。
裁判所は3年間分の賃料差額相当額と原状回復費として342万を損害として認めた事例。


詳細をお知りになりたい方は下記のPDFをご覧ください。
(PDFデータ RETIO81)
一般財団法人 不動産適正取引推進機構 機関誌 RETIO 81 

東京地判平22年12月6日東京(品川区)の単身者向けアパートで自殺
(契約期間2年 月額賃料8.5万円 敷金17万円)


賃貸人(貸主)はクリーニング費用と賃料相当額の逸失利益合わせて480万円のうち250万円を損害賠償請求請求。裁判所は4年間分の賃料の逸失利益とリフォーム代約142万円の損害賠償責任を認めた事例。


詳細をお知りになりたい方は下記のPDFをご覧ください。
(PDFデータ RETIO84 22)
一般財団法人 不動産適正取引推進機構 機関誌 RETIO 84 

東京地判平23年1月27日神奈川県の学生用マンションにて借主の長女が自殺
(契約期間2年 月額賃料7.5万円 敷金15万円)


賃貸人(貸主)は賃料等の逸失利益、原状回復費及び供養費用合わせて272万円を損害賠償請求。
裁判所は逸失利益、原状回復費及び供養費用として155万円を損害額として認定した事案。


詳細をお知りになりたい方は下記のPDFをご覧ください。
(PDFデータ RETIO84 23)
一般財団法人 不動産適正取引推進機構 機関誌 RETIO 84 

自殺の現場に限らず、孤立死(孤独死)のような自然死の場合であっても発見までに時間が掛かり、腐乱した状態や臭いが発生した場合などは原状回復費などで賃貸人側と紛争となるケースが数多くあります。不安に思われる事があればまずは専門家にご相談ください。

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