名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ
2021.05.21
「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」について
おはようございます。名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八行政書士事務所の谷です。
名古屋ははやくも梅雨入りをして連日の雨でジメジメと気が滅入りますね。遺品整理の現場でも雨が降ると作業がし辛くて何もいいことはありません。晴れ間が恋しい限りです。
さて、本日の話題は昨日(5/20)に国土交通省より発表された「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関すガイドライン(案)」についてです。
昨年の2月頃から会合が始まっており、一般的に「事故物件」と呼ばれる不動産について、何が「事故」にあたり、どういった状況なら買主や借主にその事実を告げなければいけないのか(告知)、またその期間はどれくらいが相当なのかといった事を取りまとめた内容となります。
その概要についての発表と、そのガイドライン(案)について広く市民の意見を募集しようとするパブリックコメントの募集が開始されたというものです。
もともと「事故物件」という言葉に決まった定義はなく、なんとなく過去の事例や判例に基づいて運営されてきた為、事故物件を巡って売主や買主、貸主や借主間でトラブルが生じていました。
主に「そんな事情があったのなら買わなかった(借りなかった)のに、、、、」といった、「心理的瑕疵」という問題がその中心です。
心理的瑕疵とは、「いやだな」「気持ち悪いな」といった、例えば室内で殺人事件があったようなケースで、室内は綺麗にリフォームされていて問題ないけれど、「心理的」な面で利用に抵抗を感じるような状況のことをいいます。
特に賃貸物件などで問題になる「自殺」が代表例になりますが、これまで自殺に関しては告知義務の発生する事故扱いとなり、一般的にいう「事故物件」と呼ばれる状態になっており、自殺=事故物件という図式が成り立っていました。
問題は近年問題となっている室内での孤独死(孤立死)と呼ばれる状況での死亡の場合です。孤独死は自殺とは異なり、自然死であり、賃貸物件であっても老衰や病死などはごく当たり前に発生することであり、それは心理的な瑕疵には当たらないとするのが、これまでの判例などでの立場です。
今回のガイドラインでも自然死は基本的には告知義務の発生しないとされており、不動産を取り扱う業者には一定の指針が示されたことは間違いありません。
また、同じくガイドラインでは、孤独死のケースで長期間遺体が放置された結果、特殊清掃等がいる状況の場合は、原則告知が必要となるとしています。
これは、同じ自然死の場合であっても、発見された状況によっては告知の要、不要の対応が分かれるということであり、孤独死などが発生した場合はいかに早くご遺体を発見するかが、その後の賃貸物件の取扱いに大きく影響することを示しています。
こうした形で事故物件とは何か?告知義務が発生する事故とは何か?といった、定義付けがされることによって、不動産を扱う業者にとっては、告知義務が必要なのかどうかの判断基準ができ、また国の指針に基づいて告知するかしないかを決めることで、万が一依頼者との間でトラブルが発生したとしても責任を問われる可能性は低くなることでしょう。
今回のガイドラインは「宅地建物取引業者による・・・」とタイトルが示している通り、あくまで宅地建物取引業者が事故物件と呼ばれる物件を取り扱う際の指針となっており、賃貸物件などでよく問題となる貸主と借主(遺族)間での原状回復費や逸失利益などの取扱いについては一切触れられておりません。
通常の賃貸物件の退去の際の大家と入居者間の原状回復に関する指針としては、「原状回復めぐるトラブルとガイドライン」が既に用意されており、紛争の予防に非常に役にたっています。
これと同じように、賃貸物件で孤独死や自殺が起きた場合に遺族や連帯保証人が負うべき負担の範囲や割合など、宅地建物取引業者用ではなく、一般消費者向けのガイドラインも作成してもらえないかと切に願うところです。
コロナ禍で、賃貸物件での自殺や孤独死の相談が増えています。例年は暑い時期に集中するこうした相談が今では自殺の相談の割合が増えるにつれて、時期も関係なく相談が入ってきております。
とりあえず、パブリックコメントに一般消費者用のガイドラインの作成に関する要望は記入してきましたが、なんとかなりませんでしょうかね?国土交通省さん。
今回発表されたガイドラインについては下記をご参照ください。
宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」(案)に関するパブリックコメント(意見公募)
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