名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ
2023.07.12
民法改正後の事故物件での連帯保証人の責任の範囲
おはようございます。名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八行政書士事務所の谷です。名古屋では連日真夏日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
例年梅雨明け前後から高齢者の賃貸物件での孤独死等の相談も増えてきますが、学生の場合は夏休み明けの8月の終わりごろから自殺が増加する傾向にありますので親御さんはお子さんの様子に注意してあげてください。
特に大学生のように親元から離れて暮らしているお子様の場合は、様子の変化に気づき辛くなってしまいますので、より一層の注意を払ってあげてくださいね。
さて、今回は何度も話してきた賃貸物件で事故が発生した場合の連帯保証人の責任の範囲について再度書かせて頂こうかと思います。
過去に何度も連帯保証人の責任についてはブログ等で書いてきてはいるのですが、今回は民法改正後の連帯保証人の責任の範囲について書いていこうと思います。
改正民法は2020年4月1日からの契約に適用されることから、依然として連帯保証契約の件数としては改正前の契約件数の方が多いかと思われます。
また、近年の賃貸契約では保証会社の利用が前提となっているケースも多く、改正前民法下のように、入居者の親族が連帯保証人となるというケースは少ないと予想されます。
ですので、今回のブログの内容の対象者は、「2020年4月1日以降の賃貸借契約で連帯保証人となっている方」となります。保証会社を利用している場合の「緊急連絡先」になっている方とは異なりますのでご注意ください。
民法改正前の連帯保証人の責任は青天井
保証会社の利用が無かった時代や民法改正前に多かった相談では、「家族が賃貸物件で自殺しました。私は連帯保証人になっているのですが、どこまで責任を負わなければいけないのでしょうか?」という相談が多くありました。
近年は保証会社の利用が増えており、親族は連帯保証人ではなく「緊急連絡先」となっていることが多く、こうしたケースでは、極端な話し「相続放棄」をしてしまえば、未払い家賃や原状回復費、逸失利益等の損害賠償は一切支払いをしなくて良くなります。
しかし、保証会社の利用が無い時代や民放改正前は、連帯保証人の責任は非常に重いものであり、また相続放棄ではその責任から逃れることはできないことから、連帯保証人の責任は青天井とも言えるものでした。
ですので、賃貸物件で自死などの事故が発生してしまうと、何百万円にも及ぶ請求や貸主側の対応によっては建物の建て替えなどを求められることもあったりしました。
もちろん、貸主側の請求が全てそのまま認められる訳ではありませんが、貸主側の請求がしっかりとした理由に基づいて請求されているものである限り、連帯保証人としては支払いをしないといけない可能性があるものであった訳です。
民法改正後の連帯保証人の責任は極度額まで
民法改正前の連帯保証人の責任の範囲に対して、改正後の個人の連帯保証人の責任は有限となります。
具体的には、2020年4月1日以降の賃貸借契約において、個人に連帯保証人を求める場合は契約書に「極度額」を定めなければならないとされました。(極度額の記載のない連帯保証契約は契約自体が無効となる)
極度額とは、連帯保証人が支払い義務を負う限度額のことであり、改正前は青天井の責任を負うことのあった連帯保証人の責任の範囲を契約の時点で最高いくらまで負担しなければいけないのかを明確にするものとなります。
ですので、事故案件を例にすると、入居者が室内で自死をしてしまい貸主から原状回復費用及び逸失利益の損害賠償として合計300万円請求されたとしても、契約書に記載されている極度額が100万円となっているのなら、連帯保証人に支払い責任は100万円までしかないという事になります。
これは、事故案件の解決に向けて従前は貸主と借主の遺族とで話し合いや裁判等で支払い金額を決めていた連帯保証人の責任とは大きくことなり、貸主、借主の協議等はなくても連帯保証人の責任の上限は極度額に記載された額までということです。
入居者死亡後に発生した負債については連帯保証人に責任なし
極度額は、最高いくらまで連帯保証人は責任を負わなければいけないのかの上限金額であるため、当然全ての事案に対して極度額の支払いを請求される訳ではありません。
例えば、極度額100万円と記載のある賃貸契約において、持病を抱えた入居者が入院したまま亡くなり、家賃を3ヶ月分(30万円)滞納したまま亡くなった場合、連帯保証人の責任はどうなるのでしょうが?
極度額は、根保証契約と呼ばれる物であり、常時発生と消滅を繰り返す債権債務を極度額の範囲において連帯保証人が責任を負うというものですから、どこかの時点で連帯保証人が負う責任の範囲を確定する必要があります。
それが、元本確定事由と呼ばれるものであり、入居者の死亡はこの元本確定事由となり、元本確定事由発生後に生じた債務については連帯保証人は責任を負う必要がありません。
つまり、入居者の死亡時の債務が30万円の未払い賃料であるなら、連帯保証人の支払い責任は30万円となるわけです。
ただし、賃料債務については、30万円までしか責任を負わないとしても、連帯保証人には原状回復義務もありますので、室内に故人の残置物等が残ったままの状況などであれば、賃料債務とは別に処分費等の原状回復費用の責任を極度額を限度として負う可能性は依然として残っております。
まとめとして、賃貸物件で事故が発生したような場合に貸主から極度額を超える請求がきたとしても、連帯保証人は極度額までしか支払い責任がないことをまず前提として考えてもらい、極度額の範囲内であるけれども、貸主側の請求に疑問があるといった場合は専門家へ相談するようにしてください。
保証会社の利用が増える近年では、個人の連帯保証契約での問題は少なくなっていくと思われますが、今回はそうした狭い範囲での疑問もあるかもと思い、念のため書かせて頂きました。
賃貸物件での孤独死や自死といったトラブルでの相談は第八行政書士事務所までどうぞ~。