名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ

2024.08.17

家庭裁判所は遺品整理を理由に相続放棄の申述を認めない事はあるのか?

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おはようございます。名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八行政書士事務所の谷です。

名古屋は連日の猛暑日で非常に暑いです。南海トラフの地震予報等で騒がしかったですけれど、この時期の地震だと地震での直接的な影響よりも、停電にともなう熱中症での死者が増える事の方がよっぽど心配になってきますね。

さてさて、真夏日が続く中ですが、暑さに比例して孤独死での相談も増えています。

特に多いのが賃貸物件で孤独死して特殊清掃が必要な状況になってしまったが、今後どのように手続きを進めていけばいいのか?というものです。

この辺りの事は、メニュー画面の「特殊清掃」に専用のページを設けて解説していますのでそちらをご確認頂くとして、今回はこうした孤独死問題で良く聞かれる内容のひとつ「相続放棄前や相続放棄中に遺品整理をした場合、相続放棄に影響があるのか?(家庭裁判所にバレるのか?)
」という部分について解説しておこうと思います。

最近の賃貸契約では連帯保証人ではなく保証会社を利用した契約が主流となってきており、昔ほど連帯保証人が問題になるケースは少なくなってきた感じがします。

賃貸物件で孤独死等の事故が起きると基本的に相続人である家族へまず連絡がいき、家族と連絡が取れないような場合に連帯保証人に対応を求めていくという流れでした。

ただ、最近は連帯保証人がいない契約が多く、保証会社を利用したケースでは家族等は「緊急連絡先」として登録されていることがほとんどで、「緊急連絡先」として登録されている家族には連帯保証人に求められる程の強い賠償責任はありません。

夏場の賃貸物件で孤独死が発生し、発見が遅れてしまい遺体の腐敗がかなり進んでしまったようなケースでは、賃貸人や管理会社から高額な清掃費用や原状回復費用を請求される事も珍しくはありませんが、こうした場合でも、緊急連絡先となっているだけの相続人は「相続放棄」をすることで、高額な清掃費用や原状回復費用の支払いを回避することができるようになります。

相続放棄はプラスの財産もマイナス財産も一括で放棄する手続きですので、相続放棄をする前に故人の財産状況の把握は必要となりますが、故人に目立った財産がないことが分かっており、賃貸人へ支払う清掃費用や原状回復費用の方がはるかに高額になると分かっていれば、最初から相続放棄を選択するのも有効手段のひとつと言えるでしょう。

最近はいろいろなサイトやブログ等でもこうした内容は発信されているので、いざ事故物件の当事者になった場合であったとしてもネットで情報を収集すればある程度の対応策を見つけることができるようになってきました。

ただ、そうしたサイトやブログ等では、「遺品整理をすると相続放棄ができなくなる可能性があるので注意しましょう」と記載されている事が多くあります。

これは、「相続の単純承認」について注意喚起している物で、相続の単純承認とは簡単に言ってしまえば、故人の財産を処分した者は故人の相続を認めたものと判断するよというものです。

ですので、「故人の室内に残っている家財道具類は当然故人の財産ではありますから、これらを遺品整理として処分してしまうと相続放棄ができなくなる可能性があるので、相続放棄をする場合は遺品整理してはいけないと」色々なサイトで書かれています。

では、何故遺品整理をすると相続放棄ができなくなるのか?

この点が結構誤解されている部分で、相談者の多くが「相続放棄をした者が遺品整理をした場合、家庭裁判所が調査を行って遺品整理の事実が判明したら相続放棄の申請を却下される」と思われていたりします。

しかし、これは間違いです。

家庭裁判所は故人の部屋の遺品が処分されたかどうかなど調査はしません。相続放棄の案件を一件、一件、遺品整理をしたかどうかまで調査していたら家裁の業務はパンクしてしまいます。

ですので、相続放棄の手続きはあくまで相続人から提出された書面でのみ審査しているだけで、申述書の記載方法を間違えていなければ基本的に全ての相続放棄の申請は受理されます。

また、相続放棄の手続きが終わる前に公共料金の請求書や消費者金融からの督促状が届いたら、払わないといけないのか?と心配される方もいますが、相続放棄をする以上は支払う義務はありません。

相続放棄の手続きには、家庭裁判所へ書類を提出してから完了までに1ヶ月~2ヶ月程かかりますが、相続放棄が認められれば、相続放棄の効果は相続開始時に遡ってその効果を発揮しますので、相続人は最初から相続人ではなかったものとして扱われます。

ですので、相続放棄の手続き中に消費者金融から督促状などが届いていたとしても、相続人は相続放棄によって最初から相続人はなかったとされるため、相続人でない以上は支払う義務もないことになります。

では、色々なサイトで注意喚起されている「遺品整理をすると相続放棄ができなくなる」というのはどういう意味なのか?というと、実際は上記の通り、相続放棄は普通にできます。

ただ、相続放棄をする者や相続放棄した者が故人の財産を処分した場合は後から相続放棄が無効にされる可能性があるということです。

これは、最初に書いた「相続の単純承認」の話に戻りますが、故人の財産を処分するということは自身が相続人であるからこそできる行為であり、故人の財産を処分する以上、自信が相続人であることを認めていると考えられます。

相続の単純承認に事由に該当すると、強制的に相続人とされてしまい、これは相続放棄の手続きが完了した後でも同じで、相続放棄が完了した後なら自由に故人の財産を処分できるという訳ではありません。

相続放棄をした後に故人の財産を処分した場合は、相続の単純承認の効果で強制的に相続人に戻されて、既に手続きが終わっている相続放棄が無効となってしまう可能性があるということです。

ただ、こうした事が起きるのはかなり稀なケースとも言えます。

遺品整理を例でいうのなら次のような感じでしょうか。

・真夏の賃貸物件で孤独死が発生
・警察が故人の遺体と貴重品を回収。
・DNA検査の結果本人確認の完了と室内から回収された預金通帳が遺族へ返却される
・本人確認が取れたことから管理会社が遺族へ特殊清掃や原状回復を要請
・遺族は連帯保証人ではないので、相続放棄を選択し、家庭裁判所へ相続放棄の申述を行う。
・遺族は管理会社へも相続放棄をする事を伝える
・遺族が相続放棄をすることから故人の遺品整理や原状回復は管理会社にて実施することに決定
・管理会社が故人の家財を処分するにあたり、相続人に家財処分に関する同意書面を発送
・相続人が故人の家財を管理会社にて処分することに同意(同意書の返送)
・管理会社にて遺品整理実施
・相続放棄の手続きの完了として家裁より「相続放棄申述受理通知書」が届く
・管理会社より故人の室内から見つかった写真や行政書類等が遺族へ返却される
・警察や管理会社から返却された貴重品の中から預貯金通帳があることを遺族が気づき、遺族が預貯金の中に残っていた金銭を自身の生活費に充てる。

孤独死現場に残されていた一般的な家具や日用品は基本的に市場価値が無いものと判断されますので、遺品整理で処分したからといってすぐに故人の財産を処分したとして単純承認事由に該当するということはありません。

ただ、上の流れにあるように多くの管理会社では故人の家財を処分するにあたって遺族から家財処分に関する同意書を取るようにしています。

これは単に、後から処分した家財の中に思い出の品や高価な品があったこと等を理由に遺族からクレームが来る事を防ぐことを目的として取っているものですが、この故人の家財を処分する事に同意をする事は遺族が故人の財産を処分することを認めていることになります。

ですので、仮に故人の室内に高価な家電や貴金属等があった場合には遺族が自分達で遺品整理をしていなくても故人の財産処分したものとされる可能性があります。

また、上で書いた流れの最後のように故人の預貯金を引きだして遺族の生活費に充てるような行為も故人の財産処分とされる可能性が高い行為となります。

では、このような故人の財産を処分した行為はどのようにして家裁の知るところとなり、相続放棄が無効となるのか?

先ほども書いたように家裁はわざわざ故人の遺品整理の状況等はいちいち確認したりはしませんし、相続放棄をした者がわざわざ故人の財産を処分した等とは申告などしません。

ですので、相続の単純承認を理由に相続放棄が無効となるということは稀なケースといえるでしょう。

実際に起きるとしたら、故人にお金を貸していた友人などがお金を返してもらえなければ、借金のカタとして故人が持っていたロレックスの時計を回収する予定だったのに、管理会社が遺品整理の際にその時計を売却して、遺品整理費用の一部に充ててしまったというケース。

このようなケースならロレックスの時計という高価な故人の財産を処分することに遺族が同意していたとして、その友人が相続放棄の無効を訴えるという事は考えられます。

相続放棄が無効とされれば、この友人は相続放棄の無効によって相続人に戻った遺族へ借金の返済を請求できることになります。

ただ、相続放棄をするようなケースでは基本的に故人の資産状況はマイナス面に向いている事が多く、反対に故人が高価な家財道具を多数持っているようなケースならそもそも相続放棄を検討しないということもありますんで、上の事例のような事は滅多にないのではないかと考えられます。

室内の残置物だけでは故人の財産状況ははっきりしませんので、相続放棄するしないにしても財産調査をしっかり行ってから決定する必要があることは言うまでもありません。

ただ、電話相談で多い家裁が遺品整理の状況を確認するといった事は心配する必要はありませんので、むしろ、財産調査や相続放棄の期間内に正しく相続放棄の申述をすることに注意を払うようにしてくださいね。

賃貸物件での事故や遺品整理、相続手続き等のご相談は名古屋第八行政書士事務所までどうぞ~。

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