名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ

2025.02.13

家族が自殺した事を大家や管理会社へ伝える義務はあるのか?

おはようございます。
名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八行政書士事務所の谷です。

最近は曇りの日も多く、気分が滅入ってきてしまいますよね。太陽の光には幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」を増加させる効果があるとのことで、気分が落ち込んだ時などは日光浴がお勧めです。私も事務所仕事が続く時などは、窓辺で光合成をするかのようにじっとしている時間がたまにあります(笑)

さて、気分が落ち込むと起きてしまうのが「自殺」の問題です。当事務所では賃貸物件で起きた自殺に関して相談を受けて、アドバイスや事案に沿った専門家を紹介していますが、自死遺族となってしまった場合の対処方法については、別ページて解説していますので、家族が自殺してしまった場合や、連帯保証人として大家や管理会社と今後の話し合いをしていかないといけないといった場合は、そちらをご参考ください。(
賃貸で自殺が起きた際の損害賠償等の質問

今回は、自死遺族や連帯保証人の方からの相談の多い、「入居者が自殺した事を大家や管理会社へ伝える義務があるのか?」について話していきたいと思います。

賃貸物件で自殺が起きると何が問題なのか?

まず、この問題の前提として、賃貸物件で入居者が自殺した場合は当該部屋は心理的瑕疵のある部屋、いわゆる「事故物件」となってしまうという事情があります。

心理的瑕疵とは、簡単に言えば、「気持ち悪い」と感じてしまう事情がその部屋にあるということです。

ですので、部屋を利用するにあたってはどこにも破損等はないのですが、借りる側の気持ちの問題として、借りたくないと思う事情がその部屋にはあるという、心理的な損傷があることを心理的瑕疵と言います。

当然、借りる側がそうした嫌悪感を抱く事情があれば、貸す側としてはなかなか次の入居者が決まらないことになり、場合によっては家賃を減額したり等の対応をとって、次の入居者を募集したりします。

家賃を減額して募集すれは、その分賃貸人としては減収となってしまい、アパート経営をしている賃貸人とっては、毎月の返済もあるため、所有物件で自殺等の事故が起きてしまうのは死活問題とも言えます。

その為、賃貸人が所有する物件で自殺が起きた場合は、家賃を減額して次の入居者を募集した等の事情によって生じた「金銭的な損害」を賃貸人は賃借人(入居者)の家族や連帯保証人へと請求(損害賠償)して、損害の補填に充てようとします。

自殺した故人が大きな財産を持っていないような場合でしたら、自死遺族としては「相続放棄」を選択すれば、賃貸人からの請求については支払いに応じる必要はなくなりますが、故人がそれなりに資産を持っている場合や連帯保証人といった場合は単純に相続放棄をしただけでは解決できません。

また、賃貸物件で自殺が起きた場合は賃貸人から多額の賠償請求がされる可能性があるということは、近年はネット等からの情報により広く知られるところでもあり、自死遺族となってしまった家族や連帯保証人等もそうした情報に多く触れていることになります。

その場合に自死遺族や連帯保証人が考えることが「大家や管理会社に黙っていれば自殺があったことはバレないのではないか?」「入居者が自殺したことを伝えなければ、賠償請求もされなくて済むのでは?」ということです。

大家や管理会社へ遺族や連帯保証人は自殺があった事を伝える義務があるのか?

では、賃貸物件で自殺が起きてしまった場合に、自死遺族や連帯保証人は大家や管理会社等の賃貸人へと入居者が自殺したことを伝えないといけないのでしょうか?

自殺の方法や発見までの期間にもよりますが、自殺が起きたからといって必ずしも部屋が損傷する訳ではありません、これまで何百件と自殺や孤独死現場の遺品整理を行ってきていますが、発見が早く遺体が腐乱する前に発見されているような自殺現場は、遺品整理会社が清掃を行ってしまえば、その部屋で自殺があった事実は外観上は全く分からない状況になります。

ですので、連絡が取れなくて心配した家族が様子を見にいったら自殺していたようなケースでは、発見時に警察や消防が来ることになりますが、昼日中や長期の連休中のような近隣住人が少ない時期や時間帯に発見された場合は、特に周りに知られることもなく事故処理が終わることも珍しくはありません。

警察や消防を見ていた近隣の住人がいたとしても「事故かな?」「病人かな?」程度の認識であり、その部屋で自殺が起きていたという事は知りようもありませんし、殺人や複数名の遺体が見つかったというような特殊な事案でもなければニュースになるといった事もありません。

ですので、自死遺族や連帯保証人が、自殺が起きた事を伏せて退去手続を行ってしまえば、大家や管理会社もその部屋で自殺が起きたという事を知らずに終わってしまうということは十分あり得ます。

大家や管理会社が自殺が起きた事を知らない以上は、損害賠償の請求といった問題も起きませんので、一般的な退去手続の流れに沿って退去してしまえば特にトラブルなく終わってしまうことになります。

では、そうした自殺があった事を大家や管理会社に対して黙っている行為は法律的な問題に触れるのでしょうか?

入居者が自殺した事を大家や管理会社といった賃貸人へと伝える義務があるとした明文の規定はありませんので、敢えて大家や管理会社へと伝える義務があるとまでは言えません。

ただ、入居者が自殺した場合の退去手続は、遺族や連帯保証人が行うことになるでしょうから、場合によっては「契約者本人はどうされたのか?」といった疑問を大家や管理会社が抱くことにはなります。

入居者が学生で自殺したのがお子さんだったような場合なら、その親が退去手続を取ることになりますので、その場合なら未成年の子供の代わりに親が退去手続を取ること自体はなんら不思議でもありませんので、特に疑問に思われることもないでしょうが、兄妹が入居者で連帯保証人になっていた別の兄妹が退去手続を行うといった場合ですと、「ご本人はどうされたのですか?」と思うのが普通です。

そうした場合に、大家や管理会社から「ご本人さんはどうされたのですか?」と質問された時に、実際には既にその部屋で死亡しているのに「先に引っ越し先で手続をしています」や「仕事で忙しいようなので代わりに手続を行っているんですよ」といった回答を連帯保証人がしてしまうと、明らかに虚偽の説明をしていることになりますので、後日に自殺の事実がなんらかの事情で判明した場合は大きなトラブルに発展してしまう可能性はあります。

また、死亡した事実については、正直に話すけど死亡した原因について「病気で亡くなった」と伝えてしまう行為も虚偽の説明となってしまいます。

賃貸物件で孤独死が発生した場合であっても早期の発見であれば「事故物件」とはなりませんが、自殺の場合は早期に発見したとしても「事故物件」となってしまいます。

大家や管理会社が「病死」と伝えて納得する場合もあれば、賃貸人によっては「それでは、死亡診断書を見せてください」と言ってくるケースもあり、死亡診断書(自殺の場合は「死体検案書」)には、何が原因で死亡したかが書かれているため、死亡診断書(死体検案書)を確認されてしまうと、病死と伝えていた死亡理由が実は自殺だったと判明して、これまた大きなトラブルになりかねません。

※死亡診断書を提出する義務はありませんが、見せないことで不信感を抱かれることは避けられないでしょう

つまり、大家や管理会社へ自殺があった事を敢えて伝える義務はないが、質問に対して虚偽の説明をしてしまうとそれが賃貸人対して不利益な情報を隠匿していたことになり、後日何も知らない賃貸人がそのまま部屋を貸したことで、新しく入った入居者が自殺の事実を理由に賃貸人を訴える等した場合は、最終的に虚偽の説明をした遺族や連帯保証人へとその責任が跳ね返ってくる可能性があるということです。

自殺があった事実を大家や管理会社へ黙ったまま手続するかどうかは、最終的には遺族や連帯保証人が判断することではありますが、自殺があった事を黙って手続を進める以上はリスクも当然あることを知っておく必要があります。

第八行政書士事務所では、賃貸物件で起きた自殺や孤独死の相談に応じております。相談者の方にとって、どのような選択肢があるのか、またどのように対応していくべきかのアドバイスを行っておりますので、賃貸物件での自殺や孤独死でお困りの場合はご相談ください。

※当事務所では、賃貸人との交渉を遺族(連帯保証人)に代わって行うことはできません。賃貸人との交渉の代行を希望される場合は弁護士へとご相談ください。

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