名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ

2026.04.07

相続手続の落とし穴〜 兄弟姉妹が相続人になったとき、あなたの手続きが止まる3つの理由 〜

はじめに:増える「兄弟姉妹間の相続」という難題

おはようございます。名古屋の遺品整理・死後事務を専門の第八行政書士事務所の谷です。

近頃、立て続けに相続手続きのご依頼をいただいています。ありがたいことではあるのですが、これらのご依頼に共通するのが「兄弟姉妹間の相続」という点です。

「夫が亡くなった。子どもはいない。預貯金の解約と不動産の名義変更をしたい」——こうしたご相談において、相続人の調査を進めると、必ず浮かび上がってくるのが故人の兄弟姉妹の存在です。

 

民法上の相続順位はご存知でしょうか。

  第1順位:配偶者+子(直系卑属)

  第2順位:配偶者+父母(直系尊属)

  第3順位:配偶者+兄弟姉妹(傍系血族)

 

お子さんがおらず、故人の両親もすでに他界されている場合、相続人は「配偶者+故人の兄弟姉妹」となります。さらに、その兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、甥・姪が代襲相続人として登場します。

問題は、こうした兄弟姉妹や甥・姪との関係です。長年にわたって交流がほとんどなく、連絡先も住所も知らない、場合によっては生存確認すら取れない——というケースが実に多いのです。

問題① 相続人が協議に応じてくれない

「無視」は法律上、通用しない

遺産分割協議は、相続人全員が参加し、全員が合意しなければ成立しません。たとえ故人の配偶者が「財産はすべて自分が受け取る」と思っていても、法律上は兄弟姉妹(または甥・姪)の同意なしに手続きを進めることはできないのです。

「何十年も会っていないし、連絡を取っても返事がない。もうこのまま無視して手続きを進めてしまえないか」——そうおっしゃる方も多くいらっしゃいます。しかし、それは法律上できません。

「応じない」が引き起こす深刻な事態

協議に応じてもらえない場合、最終的には家庭裁判所に「遺産分割調停」の申立てを行うことになります。調停でも合意できなければ「審判」に移行し、裁判所が強制的に分割内容を決定します。

このプロセスには、数ヶ月〜数年単位の時間と、弁護士費用などのコストがかかります。故人が亡くなってから不動産の名義変更もできない状態が長期間続くのは、残された配偶者にとって非常に大きな精神的・経済的負担となります。

なぜ「応じない」のか?

そもそも交流のない相手からいきなり「遺産分割協議書にサインしてほしい」と連絡が来ても、警戒するのは自然なことです。
「自分の取り分はどうなるのか」「だまされているのではないか」と疑念を持たれてしまうことも少なくありません。また、単純に「面倒だから関わりたくない」という方もいらっしゃいます。

問題② 相続人の居場所がわからない

まず「戸籍調査」から始まる長い道のり

相続人が兄弟姉妹となる場合、まず戸籍謄本を取り寄せて相続人を確定させる作業から始まります。この調査は、故人の出生から死亡までのすべての戸籍(改製原戸籍・除籍謄本を含む)を追いかけていく作業で、多くの場合が複数の市区町村にまたがって請求する必要があります。

「被相続人の兄が生きているのかどうかもわからない。もし亡くなっているなら、その子ども(甥・姪)が相続人になるが、その子がどこにいるのかもわからない」——こうしたご相談は珍しくありません。

住所がわかっても「会える」とは限らない

戸籍の附票を取得すれば、現在の住所を調べることができます。しかし、住所がわかったとしても、実際にコンタクトが取れるかどうかは別問題です。手紙を出しても返信がない、電話番号がわからない、という状況も起こります。

仮に連絡が取れたとしても、「なぜ今さら」「そちらの都合で連絡してくるな」と拒絶されるケースも存在します。

「時間と手間」のリアル

相続人の特定から住所確認、そして実際に遺産分割協議書へのサインまでにかかる時間は、スムーズにいっても数週間、こじれると数ヶ月〜1年以上になることもあります。その間、故人の預貯金口座は凍結されたまま、不動産の名義変更もできず、相続手続きは宙に浮いたままとなります。

問題③ 相続人が認知症になってしまっていた

認知症の相続人は「意思能力がない」とみなされる

長年連絡を取っていなかった兄弟姉妹に連絡が取れたとしても、今度は別の問題が待ち受けていることがあります。
それが、相続人の認知症です。

遺産分割協議は「法律行為」です。法律行為を有効に行うためには「意思能力」が必要とされます。認知症によって意思能力を失っている方は、遺産分割協議書にサインしても、それは法律上「無効」となります。

「義兄は施設に入っていて、認知症が進んでいると聞いている。でも、どうすればいいかわからない」——こうした状況に直面される方が増えています。

必要になる「成年後見制度」

認知症等で判断能力が不十分な方が相続人になっている場合、家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申し立てる必要があります。選任された後見人(多くの場合、弁護士や司法書士などの専門家)が本人に代わって遺産分割協議に参加します。

ただし、後見人はあくまで「本人の利益を守る」立場です。そのため、後見人は本人の法定相続分を確保する方向で動くことが多く、「配偶者がすべて相続する」といった内容には基本的に同意してもらえません。

後見申し立てにかかる時間とコスト

  申立てから後見人選任まで:通常24ヶ月程度

  申立て費用(裁判所):数千円〜数万円

  鑑定費用(必要な場合):5万〜10万円程度

  後見人への報酬:月額26万円程度(財産額による)

後見人が選任された後も、相続手続き完了まで引き続き後見人との調整が必要となります。相続手続きのために始まった後見制度が、手続き完了後も継続するという点も、ご家族にとっては想定外の事態となることがあります。(将来的にはスポット利用も可能になる見通し)

すべての問題を解決する「遺言書」という選択肢

遺言書があれば、協議は「不要」になる

ここまで3つの問題点をご説明してきましたが、実はこれらすべての問題を根本から防ぐことができる手段があります。それが「遺言書の作成」です。

適法に作成された遺言書があれば、遺産分割協議を行う必要がありません。遺言書の内容に従って、相続手続きを進めることができます。

つまり——

  協議に応じてくれない相続人がいても、関係ない

  相続人の居場所がわからなくても、関係ない

  相続人が認知症になっていても、関係ない

遺言書一通で、これらの問題はすべて回避できるのです。

遺言書種類と「公正証書遺言」のすすめ

遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。

自筆証書遺言は、自分で紙に書いて保管するタイプです。費用はかかりませんが、形式不備で無効になるリスクや、死後に発見されない・改ざんされるリスクがあります。(法務局の保管制度を利用すれば少額の費用は発生しますが、このデメリットは解消可能)

一方、公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成に関与します。費用はかかりますが、無効になるリスクが極めて低く、原本が公証役場に保管されるため紛失の心配もありません。相続手続きで銀行や法務局に提出する際も、スムーズに対応してもらえます。

残される配偶者の安心を守るためには、ぜひ公正証書遺言の作成をおすすめします。

「まだ元気だから」は遺言書を作らない理由にならない

遺言書の作成は、病気や高齢になってからでも可能ですが、認知症が進んでしまうと「意思能力なし」とみなされ、遺言書自体が無効になるリスクがあります。

元気で判断能力がしっかりしているうちに作成することが、最も確実な方法です。

「自分が死んだあとのことは考えたくない」——そうおっしゃる方の気持ちはよくわかります。しかし、遺言書を残すことは、残された大切な方への「最後のプレゼント」ではないでしょうか。

おわりに

兄弟姉妹間の相続は、親子間の相続に比べて関係性が希薄になりやすく、手続きが長期化・複雑化するリスクが高い相続のひとつです。

「うちは大丈夫」と思っていても、いざ相続が発生してから問題が表面化するケースは後を絶ちません。

遺言書の作成をご検討の方、または相続手続きについてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

名古屋で遺品整理・死後事務・相続手続きのサポートを行う第八行政書士事務所が、丁寧にお話をお聞きします。

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