原状回復にかかる判例【事例41】

[事例41]
 違約金支払い条項が消費者契約法10条に違反するとされた事例
 東京地方裁判所判決 平成22年6月11日
〔敷金70万5000円 返還60万5284円〕


1 事案の概要

(原告:賃借人X 被告:賃貸人Y)
賃借人Xは、賃貸人Yから平成20年2月22日、家賃月額23万5000円並びに管理費・共益費月額1万7000円で契約を締結したが、賃借人Xは同年9月22日に解約を申し入れ、本件賃貸借契約は同年11月22日に終了し、同日までに明け渡しが完了したが、明け渡しをするに際して賃借人Xは賃貸人Yの代表者の指示に基づき以下の工事を行った。
 ① 床板塗装工事 12万0750円
 ② クロスの張替え 15万7920円
 ③ ルームクリーニング 5万2500円
 ④ その他諸経費 3万6330円
 総合計 36万7500円

また、賃借人Xは本件賃貸借契約の違約金条項に基づく違約金として駐車場料金を含む30 万4500円を支払った。

そこで賃借人Xは賃貸人Yに対して①敷金70万5000円の返還、②黙示の合意もしくは事務管理による費用償還請求として、ルームクリーニング代を除く工事代金31万5000円、③違約金条項が消費者契約法10条に違反するものであるとして不当利得返還請求権に基づいて30万4500円の支払を求めて提訴した。(甲事件)

これに対して賃貸人Yは、賃借人Xは本件建物の鍵2本を賃貸人Yに返還せず内1本を紛失し、1本を複製したから鍵本体の交換に要する費用を負担すべきであり、本件賃貸借契約終了後も賃借人Xは原状回復をせず明け渡しもしないとして、①本件建物の明け渡しを求めると共に、②賃貸借契約終了日の翌日から鍵本体の工事完了に至るまで約定の損害金(家賃相当額の2倍の損害金)47万円の支払い、③建物の故障・修理について賃貸人Y担当者が出動した場合の出動費(1日5000円(消費税別))の合計2万6250円(消費税込)、④鍵の引渡し、⑤原状回復工事費用相当額79万5465円、⑥鍵の交換費用2万1000円(消費税込)の支払を賃借人Xに対して求めて提訴した。(乙事件)


2 判決の要旨

これに対して裁判所は、
(甲事件)
(1)本件建物について通常損耗を超える損耗があるかについては、①居住期間は僅か8か月
   程度である、②居住していたのは賃借人X及びその婚約者の大人2名で両名とも平日昼
   間は建物にいない、③賃借人Xが殊更居住内を汚損するような態度で本件建物に居住し
   たことを窺うべき事情はない、④平成21年7月23日時点の本件建物内の写真、平成20
   年12月1日時点での本件建物内の写真を見ても居室内が汚損されているとも思われない
   こと、これらの事情を総合すると、本件建物について通常損耗を超える損耗があったと
   は認められない(契約書の中にはタバコのヤニ汚れによる壁紙の張替え、塗装費用は全
   額賃借人の負担とするとの条項があるが、同条項が一義的に明白であるとは言えないか
   ら、同条項を根拠として賃借人Xに原状回復義務があるとは言えない)。

   よって本件建物について原状回復工事は必要ではないが、少なくともルームクリーニン
   グは賃借人Xの自認することであるから賃借人Xは依頼した工事業者が工事を終了した
   平成20年12月4日に本件建物を明け渡したというべきであるので、賃借人Xは賃貸人
   Yに対し賃貸借終了後上記明け渡しを完了した日までの日割り賃料(9万9716円)は
   敷金から控除して残額60万5284円を賃貸人Yに対して請求することができる。

(2)賃借人Xの実施した補修工事は賃借人の義務として原状回復が必要でないことが上記の
   とおりであり、これが賃貸人Yの意思に反していないことから、賃借人Xは事務管理と
   してその費用の償還を請求できる。

(3)上記違約金支払条項は、消費者である賃借人Xの利益を一方的に害するというべきであ
   るから、消費者契約法10条に違反すると解するのが相当であり、違約金の支払いは無
   効の約定に基づいて法律上の原因がなく支払われたものであるからその返還を求めるこ
   とができる。

(4)以上から、賃借人Xは賃貸人Yに対して、①敷金60万5284円の返還、②事務管理によ
   る費用償還請求として31万5000円、③違約金支払条項が消費者契約法10条に違反する
   ことから不当利得返還請求に基づいて違約金相当額30万4500円、合計122万4784円
   と遅延損害金の請求ができるとした。


(乙事件)
(1)賃借人Xは鍵を1本紛失している以上契約の条項に従い鍵本体の交換費用(2万1000円
  (消費税込))を負担するところ、費用を負担する以上は鍵は無用のものであるが、契約
   上鍵の返還条項が存在し、賃借人Xがその返還を拒絶する理由もないことから賃貸人Y
   の鍵の返還請求及び鍵の交換費用の双方を認めるのが相当である。

(2)賃貸人Yが鍵の受領を拒否していることは明らかであり、賃貸人Yは賃借人Xに鍵を返
    却していないからといって本件建物の明け渡しが完了していないとは言えないから、
   鍵の返還までの損害金(1か月47万円)の支払を求める請求は失当である。

(3)出動費用については賃借人Xの都合により賃貸人Y代表者が出動した以上日当(あるい
   は出張料)が生じることが消費者の利益を一方的に害するとまでは言えず、これは公序
   良俗に反するともいえないから4日分の出動費用(2万1000円(消費税込))を賃貸人
   Yは請求できる。

(4)以上から、賃貸人Yは賃借人Xに対して①出動費用2万1000円(消費税込)、②鍵の
   引渡し、③玄関の鍵本体の交換費用(2万1000円(消費税込))の支払いを請求する
   ことができるとした。

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