名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ
2019.03.28
孤独死現場の原状回復費用は請求できるのか?
おはようございます。名古屋の遺品整理・特殊清掃専門第八行政書士事務所の谷です。今日の名古屋は非常にいい天気で春がきたな!と感じる暖かさです。ただ週末にはまた寒さが戻ってくるようでなかなか気が抜けないですね。
さてさて、毎度同じ話題で恐縮ですが、今回も表題の「孤独死現場の原状回復費用は請求できるのか?」について考えてみたいと思います。なんで、いまさら過去に何度も書いてきたことを改めて書くのかというと実はちょっと興味深い判例があったからなんです。
これまで、孤独死現場の原状回復費について出された判例は昭和58年に出されたものが参考となっており、それ以外の事例については基本的には自殺の判例を基に考えて孤独死の場合はどうなるのか?という形で考えていました。
ご存知の通り、現在は国土交通省の出している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が賃貸物件の退去の際の原状回復費に関する貸主と借主の負担割合を示したものとして浸透してきており、来年(2020年)の4月1日以降ではこのガイドラインに沿った内容で民法も改正されます。
そうした中でどちらかというと借主側の保護が図られている昨今では昭和58年の判例のように孤独死現場の原状回復費用を借主側に支払うようにと命じた判例は今後は出ないのではないかと私は考えていました。
しかし、最近の判例を改めて調査していた際に東京地裁の判例(平成29年)で、孤独死現場において通常より高額な原状回復費用の支払いを入居者側に支払うように命じた、昭和58年と同じ内容の判例が出ていたことに気づきました。
この事例は入居者が孤独死した後、2ヶ月程後に発見された事案で、遺体から体液等が漏れ死臭も部屋全体に渡って充満していたというものです。
これまではこうした孤独死で発見が遅れて遺体が腐乱してしまったような事案であっても、入居者には故意も過失もないことから、逸失利益と同様に原状回復費用の支払いも入居者側には責任はなく、遺体の腐乱によって生じた損失については入居者側は負担しなくても良いのではという考え方がありました。(弁護士の先生の間でも意見は別れますが、、、)
ですので、これまではこうした主張をされてしまうと貸主側としても強く請求することはできないのが実情でもあったのですが、上で示した判例のようにガイドラインが浸透した後でも、孤独死(腐乱)したようなケースでは通常より高額な原状回復費の請求が認められることがあると判明し、今後の賃貸経営を行っていく上で大きな影響が出てくると予想されます。
これまでは、孤独死のケースではどちらかというと貸主側の持ち出しが多くなりがちでしたが、今後は地裁判決とはいえ、貸主側の原状回復の請求を認めた判例が出たことで、遺族や連帯保証人に対しても貸主側の主張の根拠を補強する材料として使用できることになりますので、大家さんや管理会社の方にとっては朗報とも言えますね。
ただ、一般的に事故物件とよばれるケース、特に孤独死のケースではその判断は事案毎に変わってきますので、参考判例があるからといって、印籠よろしく遺族や連帯保証人へ請求を突きつけるかのように出してしまうと、相続放棄をされてしまったり、遺族側と揉めてしまう原因ともなりますので、孤独死のような難しいケースでの請求は専門家に相談した上で冷静に対処してくださいね。
当事務所でも一般的範囲のご相談は無料でお受けしておます。個別的なご相談の場合は有料でお時間を取ってご相談に乗りますので、ご連絡ください。他府県の方でも出張費をお支払い頂ける場合はご相談に応じますのでお気軽にご相談くださいね。