名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ

2020.07.01

第一順位が全員相続放棄した際の法定相続情報一覧図

おはようございます。名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八行政書士事務所の谷です。まさに梅雨!というばかりに連日の雨で困ってしまいますね。

先日も遺品整理を行っていたところ家財を室外に全て出して回収のトラックを待っていた際に突然の雷雨に見舞われて、段ボールがグズグズに、、、。

最近は段ボールではなくビニール袋でほとんど梱包しているのですが、資源となる紙などは段ボールに入れて仕分けしているので、雨に降られると一撃で撃沈です。ち~ん(泣)

梅雨開けが待ち遠しですね。梅雨の時期は食品も傷みやすいですので食中毒にご注意を!

さてさて、今回は久しぶりに「法定相続情報一覧図」について。またか、と思われる方もいるでしょうし、一覧図の事で何をそんなに書くことがあるんだ?と思われている方もいると思います。

ただ、士業の先生方でも「そういえば~どうだったけ?」と一瞬悩むかも知れない情報をちょっとだけ書いときます。私は正直ちょっとだけでなく、もの凄く悩んで法務局に問い合わせて解決しました(笑)

今回のお題は「第一順位の相続人が全員相続放棄した場合に第二順位や第三順位の法定相続情報一覧図ってどうやって作ればいいの?」というものです。

まず、結論から言っちゃいます。「そんな法定相続情報一覧図は作成できません」以上!

えええっ!?相続人の状況を一覧図にまとめるのが法定相続情報一覧図なのに、作れないの?という話しですね。

まず、基本的なおさらいですが、法定相続情報一覧図を作成する際に相続人の誰かが相続放棄をしていたとしても、一覧図上は相続放棄をした者も含めて記載します。

何故かというと、法定相続情報一覧図は相続手続きの際に必要となる故人の相続人を確認する戸籍の束に代わるものだからです。

つまり、一覧図に表示される内容は戸籍に表示される内容と同一であり、沢山の戸籍の中から相続人に関する情報だけを集約して一覧にまとめて利用しやすくした物が法定相続情報一覧図なわけです。

ですので、戸籍に載っていないことは当然一覧図にも載せることができません。相続放棄は家庭裁判所に申述して行うものであり、相続放棄が認められたとしても戸籍に載っている相続人が「相続放棄」をした事は戸籍には記載されません。

よって、繰り返しになりますが、戸籍に相続放棄の旨が記載されていない以上、法定相続情報一覧図にも、相続人が相続放棄をしていることは記載されないことになります。

ですので、たとえ現実には相続放棄をしていて相続人ではなくなっていたとしても法定相続情報一覧図には相続人として記載される訳です。(遺産分割協議などで実際には相続分はゼロとなっているような方も同じ理由から一覧図に記載されることになります。)

ここまでは、法務局の法定相続情報一覧図の作成の手引きや各種士業の先生方のホームページなどにも載っていますので、基本的確認事項ともいえます。

では、第一順位の相続人(故人の子供など)が複数人いて、そのうちのひとりが相続放棄した場合は、上で記載しているとおり、相続放棄をした者も一覧図に記載して法定相続情報一覧図の作成と申し出を行いますが、第一順位の相続人が全員相続放棄している場合に第二順位や第三順位の方の相続状況を示す法定相続情報一覧図を作成できるのか?というお題です。

先日実際に私がご依頼頂いた内容で具体例を挙げてみます。そのご依頼は遺品整理のご依頼でした。依頼者は故人のお兄様です。

賃貸物件での孤独死ということもあり、後々大家さんと揉めてしまうかもしれないと心配されて当事務所へご相談頂き、遺品整理や特殊清掃を実施することとなった案件です。

遺品整理を行う際に故人の相続人を確認したところ何十年も前に離婚した奥さんとの間にお子さんがいるとのことです。

そうなると、遺品整理を行う前に第一順位の相続人であるお子様から遺品整理を行っても良いかの確認を取らなければいけません。

事前に警察や役場などの連絡を通して相続人たるお子様の連絡先は判明していたため連絡をしてもらったところ、第一順位の相続人の方は全員相続放棄をすることとなりました。

第二順位の相続人である直系尊属は全て亡くなっていますので、最終的に第三順位たるお兄様が相続人となることとなります。

これで、家財の処分権限が相続されましたので室内の遺品整理に着手することができます。ただ、これで一安心とばかりに室内の遺品整理と特殊清掃を行っていたところ、室内から数百万円のタンス預金が発見されたのです。おっと、これは大変。

え?何が大変なの?お金が見つかって良かったじゃない?と思われるかもしれません。確かに遺品整理や特殊清掃等は結構な費用が掛かりますので、室内から多額の現金が見つかった場合は遺族の負担が減りますので大変喜ばれることでもあります。

ただ、今回は第一順位の方が相続放棄をすることを前提に第三順位のご兄弟が遺品整理等を実施しており、また、相続放棄の申述から完了までは約1ヶ月程かかることから、孤独死現場のような緊急な案件の場合は先順位の相続放棄が完了していなくても、電話などで先順位の相続人の方に遺品整理を行うことの了承を貰って家財の処分などを実施するケースが多くあります。

今回もそのケースであり、第一順位の方が相続放棄の準備で戸籍等を集めているのと並行して遺品整理等も進めていましたので、多額の現金が発見された時点では先順位の方の相続放棄はまだ完了していません。(つまり、依然として相続人であるということです)

そうなると、多額の現金が見つかったことを先順位の相続人の方へ伝えた時点で「大金が見つかったなら相続放棄はやっぱりやめた!」となることは十分考えられます。

先順位の方は相続放棄をすると言っていたからと、多額の現金が見つかった事を黙ってその後の処理をしてしまうと後々相続人間でトラブルの元となってしまいます。

ですので、再度第一順位の相続人の方へ連絡をして「〇〇百万円ものお金が遺品整理でみつかりましたけど、相続放棄されます?それとも相続されます?」と確認したところ、「私たちはそれでも相続放棄します」となりました。

一般的な感覚からすると、せっかく多額のお金が見つかったのだから相続すればいいのに、と思うところかもしれませんが、孤独死や自殺といった遺品整理に多く携わっているとこうしたケースは結構あったりします。(他人には踏み込めない複雑なご事情もありますので)

と、話しがそれましたが、こうした事情から第一順位の方は「全員」相続放棄をされることとなりました。そして遺品整理が終わった後には故人の預貯金解約などで各金融機関を回らないといけないとなった場合に法定相続情報一覧図があると非常に便利だなと思うわけですよ。

兄妹相続の場合の法定相続情報一覧図の雛形は法務局のページにありますよね。あれで作ればいいかな~と思っていたところ、「あれ、でも相続放棄した場合でも一覧図には載せるよな?」と思いいたるわけです。

「あれ、でも、相続放棄をした人も一覧図に載せる以上、第二順位、第三順位の相続人が一覧図に出てくるわけないし、、、、」となった訳ですね。

「あ、でも相続放棄の申述受理証明書を一覧図の申し出書に添えて提出すれば相続放棄したことは証明できるし、そういった方法があるのかな?」

「ん、でもそんな話しは聞いたことないしな、あれ?あれれれれ??」と混乱しはじめることに(笑)

分からないことは変にネットで調べるよりも申請先である法務局に確認するのが一番確実と、名古屋法務局に確認することにしました。

そして担当者からの回答は「第一順位の相続人が全員相続放棄した場合に第二、第三順位の相続人を示す法定相続情報一覧図というものはありません」と。明確な答えを頂きました。やっぱり無いのか!

正直な気持ち、「法定相続情報一覧図」というのですから、第一順位の相続人が全員相続放棄した場合でも、申し出の際の必要書類が増えるだけで、一覧図自体は作成できるものと考えていました。

法定相続情報一覧図は相続手続きには非常に便利な制度ですが、今回のような場合には作成できなかったり、遺言執行者は申出人になれなかったりと、かゆいところに手が届かないんですよね~。

7月から自筆証書遺言の保管制度もはじまり、ますます遺言書の役割が大きくなってくるのですから、せめて遺言執行者は申出人に含めて欲しいな。(切望)

と、当初予定していたよりだいぶ長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?同じような疑問にぶつかった人の参考になれば嬉しい限りです。

遺品整理や特殊清掃、死後事務に関するご相談は名古屋の第八行政書士事務所までご相談くださいね!

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