第八ブログ

2020.07.06

後の方が使えば便利なのに!は通じない市営住宅の怪

おはようございます。名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八行政書士事務所の谷です。

連日の雨、雨、雨でなんか部屋中が湿気っているような感じで気分が滅入りますね。名古屋は幸いちょっと強い雨程度で済んでいますが、熊本の豪雨では被害も甚大とのことで、これ以上被害が拡大しないことを願っております。

さて、今日のお題は「市営住宅の原状回復の怪」と題してちょっとだけ書かせて頂こうかと思います。

別に原状回復の怪とか書いてますが、理由さえわかれば「怪」でもなんでもないのですが、一般の方からすると不可解と思われる部分かと思います。

なんでこの話しを書こうかと思ったのかというと先月、先々月と実施した遺品整理です。一件は死後事務受任で行った市営住宅の遺品整理で、もう一件は成年後見人の先生からご依頼で行った市営住宅の退去に伴う室内整理を行ったことがきっかけです。

遺品整理に限らず、通常の退去の場合でもそうですが、市営住宅の退去の際は一般の賃貸住宅と違って国土交通省のガイドラインに沿ってすんなり退去立ち合いが終わるケースがほとんどです。

ただ、すんなり終わるようにするのにはもちろんちゃんと「原状回復」を事前に行っておく必要がある訳ですが、別段難しいことを言われる訳でもなく、基本的には「部屋の家財を全て出す」「棚やエアコンなど入居後に設置した機器などは取り外す」「最後に掃除をする」と当たり前のことだけです。

ふ~ん、まー、当然だよね。と思われることでしょう。しかし、市営住宅に同居している家族なら別ですが、結婚して別の場所にマンションや戸建てなどで生活している家族にとっては「え、それ必要!?」と思われる原状回復に関する不可解な点がいくつかあったりします。

原状回復はなにも長年使って汚れた壁紙や床材を新品に取替えろ!というものではなく、基本的には上で書いたような、荷物を出して、後から取り付けた物を外し、簡単清掃さえすれば問題ありません。

ただ、長年住んでいた間には入居者の故意や過失で汚した部分や壊した部分なども出てくるでしょうから、そうした部分はお金で清算するということです。

では、話しを戻して市営住宅の退去の際によくある「え、それ取り外さないとダメなの?」の代表的な物をご紹介します。代表例としては、
・エアコン
・インターホン(モニター付きに変更しているような場合)
・網戸(残しておいてもOKとなるケースは多い)
・BSアンテナ
・浴槽、風呂釜
・ウオシュレット
・カーテンレール

運営する行政地区によって多少内容は変わりますが、ここら辺の内容はどこの市営住宅でも、原状回復の際は取外しを要求される部分かと思われます。

ただ、遺品整理などを行うタイミングによっては、「エアコンは昨年新品に交換したばかり」や「介護に必要だから浴槽を新しくした」など、設備がほぼ新品の状況で遺品整理などを実施するケースもあったりします。

エアコンなどは新しければ家族の家の古いのと交換ということもできるでしょうが、浴槽ともなるとまず流用は難しいこととなります。(同じ団地内に家族が住んでいるなどなら別ですが)

例えば、このような昔ながらのバランス釜は市営住宅で良くみかける設備です。


ただ、長年使用していると当然バランス釜自体が故障したり、動きがおかしくなってきたりしますし、なにより釜がある分浴槽が狭いという難点もあります。

ですので、下のようなタイプにリフォームするケースも珍しくありません。

(死後事務委任契約に基づきで整理した名古屋市の市営住宅)

浴槽も広くなり、介護用に手すりなどをつけて利便性がアップしているのは一目でわかりますよね。なにより、工事してから2年程しか経っていませんので、非常に綺麗です。

でも、市営住宅を退去するにあたってもこの浴槽も元に戻さないといけません。「え、古いバランス釜の状態に戻すの?」と思われるかもしれませんが、そうではなく、多くの市営住宅でバランス釜が設置されているような物件での原状回復とは下のような状況です。



そう、何も無い状況が原状回復となります。(本来は手すりも撤去するのですが、管理事務所に相談したところ、手すりはそのままで大丈夫とのことでしたので、そのままにしてあります。)

何も無いのが原状回復?と不思議に思うかもしれません。最近の一般的な賃貸物件の場合ならお風呂はあって当然の物という感覚でしょう。

しかし、市営住宅などの古い団地のお風呂というのは、場所だけあり、浴槽やバランス釜などは入居者が入居する際に購入して設置している「後から取り付けた設備」のケースが多くあります。

ですので、入居当時に空っぽの浴室なら、退去時にも浴室は空っぽにして返すのが原状回復となる訳ですね。

ただ、上で書いたように遺品整理や退去のタイミングによっては、ほぼ新品の浴槽だったりして、原状回復とは言え、処分してしまうのはもったいないと考えるのが普通ですよね。

「別に買い取ってくれと言うわけでもないのだし、次の方が改めて高いお金出して買わなくてもそのまま使ってくれればいいよ」と遺品整理などを依頼されるご家族の方は皆さんそうおっしゃいます。

でも、いくら新しく新品同然の浴槽や釜であっても残置するのはNO!です。もちろん、管理事務所や市区町村の考え方によっては変わることもあるでしょうが、基本的には原状回復が原則で、もともと無かった浴槽や釜を残しておくのはNGとなります。

なんでそんなもったいないことをするの?せっかく新しい設備があるんだから有効に活用すればいいじゃない?と思うところなのですが、これには貸主側としての難しい問題があります。

まず、基本的に団地などでは同じ間取りで同じ家賃ですよね。もちろん、世帯の収入状況によって減免などはあるでしょうが、ベースは一緒のはずです。

なのに、あの部屋には浴槽や釜があったのに、私が借りた部屋には無かった!となれば、当然不満もでるでしょうし、トラブルのもととなります。

また、入居者が入れ替えた浴槽などを残置することを無制限に認めてしまうと管理上の問題も出てきます。浴槽などは入れ替える年代や入居者の好みによって、設置される機器は千差万別となるでしょう。

そうした種類の異なる機器が入り混じってしまうと、何か故障が起きた際に管理事務所側での対処ができなくなってしまいます。

また、賃貸借の契約の基本として、入居前に設置されている機器については特約などで排除していない限り、その部屋の「設備」とされます。

そうした、貸主側が提供している部屋に備え付けられている設備が故障した場合に誰がその修理費用を負担するのかというと、基本的には貸主側となります。

つまり、貸主側には設備が故障した場合に修理する責任が出てきてしまう為、そうした余計な管理の手間や費用を負担しないようにするには、どれだけ新しくても浴槽などの残置は認めず、もともと無かった設備は全て撤去してもらう。

そして、新しく入る方は自分で設備を設置して、故障した場合も入居者が自分の負担にて修理する。とした方が、管理する側としてはトラブルも抑えられて楽なわけです。

こうした事情は一般の賃貸物件で設置した新品のエアコンなどでも生じる問題ではありますが、管理戸数の多い、市営団地などでは管理する上では例外を認めないのが一番確実な方法という訳ですね。

遺族や家族にとっては遺品整理の際に「なんてもったいないことをするんだ!」と思われるかもしれませんが、管理する側に切実な事情があるんだなとご理解頂ければと思います。

遺品整理や死後事務に関するご相談は名古屋の第八行政書士事務所までどうぞ~。

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