名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ
2022.12.16
続)遺品整理はクーリングオフできる?
おはようございます。遺品整理・死後事務専門の第八行政書士事務所の谷です。そろそろ大掃除の予定なども考えておかないといけないなと思いつつ、結局年末ギリギリになるんだろうなと確信している自分がいたりします。大掃除は計画的に!
さて、本日は前回の「遺品整理はクーリングオフできるのか?!」の続編となります。
特に続編を載せる予定は無かったのですが、前回のままだと遺品整理業者がクーリングオフに戦々恐々となって終わってしまう可能性があるので少しフォローをしておこうかと思った次第です。
前回のブログで書いた通り遺品整理の依頼は特定商取引法の訪問販売に該当するケースが多いかと思われます。訪問販売に該当するとなると特定商取引法の消費者保護を規定する「クーリングオフ」の適用があることになります。
クーリングオフが適用されるとなると、事業者は消費者よりクーリングオフの申し出があった場合無条件で契約の解除等に応じなければならなくなり、最悪「タダ働き」となってしまう可能性があるというのが前回までの内容となります。
遺品整理業者として取れる対策は?
では、遺品整理業者として取れる対策は何かないかとなると基本的に脱法的な方法はありません。しかし、特定商取引法にはクーリングオフが使用できる期間などの規定がありますので、それに対応する形で業務を進めることで想定外の損害を防ぐことは可能となります。
まず、契約書書面を必ず発行する。
消費者側がクーリングオフを使用するにはクーリングオフが使用できる期限内にクーリングオフの申し出をする必要があります。遺品整理業は訪問販売の類型に該当するケースが多いですので、訪問販売のケースでのクーリングオフは契約書面等を受け取ってから8日以内となります。
つまり、遺品整理の依頼を受けてから8日を過ぎたなら遺品整理の申込に対するクーリングオフはできないことになります。ですので緊急性の低い遺品整理の場合でしたらクーリングオフの期間を経過した日を実際の遺品整理の実施日として作業を行えば、作業後にクーリングオフをされるという事はなくなります。
ただ、上記の8日の期間は事業者が適切に申し込み書面や契約書面を依頼者に交付していた場合に限られます。
特定商取引法の訪問販売の規制については次のように規定されています。(特定書取引法ガイドより抜粋)
以下抜粋部分
事業者は、契約の申込みを受けたとき又は契約を締結したときには、以下の事項を記載した書面を消費者に渡さなければなりません。
- 商品(権利、役務)の種類
- 販売価格(役務の対価)
- 代金(対価)の支払時期、方法
- 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
- 契約の申込みの撤回(契約の解除)に関する事項(クーリング・オフができない部分的適用除外がある場合はその旨含む。)
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
- 契約の申込み又は締結を担当した者の氏名
- 契約の申込み又は締結の年月日
- 商品名及び商品の商標又は製造業者名
- 商品の型式
- 商品の数量
- 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
- 契約の解除に関する定めがあるときには、その内容
- そのほか特約があるときには、その内容
ここまでが抜粋部分
さて、どうでしょうか?実際の遺品整理業を行われている方がいらしたらご自身の会社で使用している見積書や契約書に上記の記載は記されていますでしょうか?
特にクーリングオフに関する規定については赤字で大きく書かなければいけないとなっていますので、白黒の見積書や契約書を使用している場合はそれだけでアウト!となります。
上記の規定が記載されていなかったとしても契約自体が無効となる訳ではありません。契約自体は有効だけど、消費者側からのクーリングオフには8日の期間制限がなくなり、8日の期間経過後でもクーリングオフができるということになります。
また、今年(令和4年)の6月1日より、クーリングオフがより利用しやすくなってもいます。これまでクーリングオフをする場合は、ハガキ等の書面での通知が求められていましが、改正により「電磁的記録」による通知でもクーリングオフが認められるようになりました。
電磁的記録での通知とは、例えば遺品整理会社の代表メールや問い合わせフォームにクーリングオフする旨を記載して送信しても適切なクーリングオフの申し出と認められるようになったということです。
ですので、少なくてもいつまででもクーリングオフされる危険性が残ることがないように、依頼者へ渡す契約書面についてはクーリングオフの規定を盛り込むのも対策のひとつと言えるでしょう。
特定商取引法第26条第6項(適用除外)について
特定商取引法の適用が除外されるケースについて
特定商取引法の訪問販売類型において、消費者側のクーリングオフの使用を制限する適用除外についての記載があります。
特定商取引法26条には、クーリングオフ等の規定を除外する規定があり、その中のひとつに次のような規定があります。
これは訪問の要請を受けて自宅等へ赴いて契約した場合には、訪問販売法の規制(クーリングオフ等)については適用を除外するという内容です。
簡単に言えば、お客さんに呼ばれたのでご自宅等へ伺い契約したケースでは訪問販売にはあたらないケースがあるということです。
あれ、だったら遺品整理のケースでも基本的には依頼者から故人宅へ来て見積りをしてくれと言われるんだから、「訪問要請」にあたるのではないの?と思われます。
まさにその通りで、遺品整理の見積り依頼はお客さんに現地呼ばれて伺う訳ですから訪問販売にあたらない(適用除外)気がしますよね。
むしろ、普通に考えるなら「呼ばれて見積りに行って、急いで作業をしたのにクーリングオフが出来るのっておかしくない?」と考えるのがあたりまえかと思います。
ただ、この営業所等以外の場所で契約した場合でも依頼者から呼ばれて契約したのだからクーリングオフ等の適用は除外されるという考えは注意が必要です。
単に見積りに呼ばれて伺いその場で契約をしたというだけではこの適用除外には該当しないと考えらえれています。遺品整理のケースですとわかり辛いですので、最近問題となっている「水道工事」の事例で説明したいと思います。
水道トラブルと良く似ている遺品整理トラブル
最近、悪徳業者のトラブル例の代表各ともなっている水道工事トラブル。ポストに投函されているマグネット式の水道トラブル対応業者に電話をしたら法外な値段を請求されたというニュースは良く耳にするかと思います。(水道工事業者全てが悪質な業者と言っている訳ではありませんので誤解のなきように)
よくある緊急対応をうたうマグネットには「水道トラブル〇〇工事、〇〇工事はいずれも8,800円」のように出張工事も含めた料金と考えるなら格安に思える金額が記載されていたりします。
そうした場合にそのマグネットを見たお客さんは「この金額なら頼んでみようかな」と思って電話などで現地確認をお願いするといった流れが多いでしょう。
依頼者側としてもトレイの詰まりや水漏れといった緊急性がある場合でしたら「とにかく早く修理して欲しい」と思っていることでしょうから、そうした目につきやすい広告から電話をすることも珍しくはありません。
そうして修理にきた業者がマグネットに記載されている通りの金額で修理をするのでしたら依頼者側が訪問を要請した内容と相違がないのでクーリングオフ等については適用除外となる可能性があります。
しかし、トラブルの多くが依頼者が想定していた金額とはかけ離れた金額だったり、詰まり抜き工事を依頼したのに何故かトイレ交換やはたまたキッチンやお風呂の交換工事になってしまったと、当初訪問を要請した内容とかけ離れた契約になってしまっているケースがほとんどです。
こうしたケースでは、依頼者側は「トレイの詰まり抜き」「8,000円位の料金」という前提で水道工事業者を呼んでいるため、この前提条件からかけ離れた内容での契約を水道工事業者と締結した場合は、たとえ依頼者側が水道工事業者を呼んでいた場合であったとしても、訪問販売に関するクーリングオフの規定などはいぜん適用の範囲内となる可能性が高いと言えます。
では、話しを遺品整理業に戻して考えてみたいと思います。
遺品整理の依頼の場合も問い合わせや現地見積りになるまでにいくつかパターンがありますよね。ポスティングしたチラシを見たお客様より連絡を貰うケースや、葬儀社から紹介されるケースまたは自社のHPを見て連絡くださるお客様と様々かと思います。
例えば、チラシを見て連絡してくれたケースを例にしてみましょう。遺品整理を考えている依頼者のもとに遺品整理業者のチラシが入り、そのチラシの連絡先にお客様より電話が入ったとします。
(客)チラシを見て電話をしています。実家の遺品整理を考えているのですがどうすればいいしょうか?
(遺)お電話ありがとうございます。遺品整理ですね!正確な金額を出すためには現地を見ながらご説明させて頂きたのですが、ご都合いがかでしょう?
(客)でしたら、〇月〇日の〇時頃でしたら現地に行けます。
(遺)承知しました。では、その時間にお伺いしますので、詳しいご住所とご連絡先をお願いします。
遺品整理業者の最初の電話対応としてはよくある風景かと思います。
遺品整理の現場はどうしても現場の家財の量や立地、マンションなのか戸建てなのか等の状況によって金額が大きくことなります。ですので、より正確な見積り金額を出すためには、遺品整理業者が直接現地を確認しながら依頼者と打ち合わせをする必要があるため、こうした電話対応になることは仕方ありません。
では、このような電話対応が訪問販売法の適用除外である「訪問要請」にあたるのかというと、実は当たらないと判断される可能性高いとされます。
なぜなら、チラシ等を見て電話をかけてきた依頼者はどのような作業やどの程度の金額になるかについては未知数のままであり、その具体的な金額をしるために、遺品整理業側の現地見積りを了承しているだけにすぎません。
ですので、遺品整理業者側からの積極的な現地見積りの申し出に対して了承しているだけで、遺品整理を依頼するかどうかは未知数のまま、とりあえず見積りを貰ってから決めるか位の気持ちの可能性が高く、この状況下で見積り後に遺品整理の契約を締結したとしても、いまだ訪問販売法の規制下にあると考えられます。(クーリングオフ等の規定の適用がある)
反対に、HP等を見て作業内容や概算金額などをある程度把握したお客様からの問い合わせで、遺品整理業者側の担当者が電話対応の時点で詳しく室内の状況等の聴き取りを行い、概算金額を伝えたうえで、「それ位の金額で収まるなら遺品整理をお願いしたいので一度現地で打ち合わせをして欲しい」といったケースの場合は、依頼者側に明確な契約締結意思があるとして、クーリングオフ等の規定が適用されないケースになる可能性もあります。
いづれのケースも必ずクーリングオフが適用される、されないが明確に定まっている訳ではありません。実際にトラブルになった際も依頼者側と事前にどのような話し合いがされていたかを詳細に証明することは難しいケースがほとんどかと思われます。
ですので、依頼者から呼ばれた場合であっても訪問販売法の規制下である可能性が高いと考えて遺品整理の依頼を受けていく方が間違いはないでしょう。