名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ

2026.04.02

新年度に増える自殺相談──賃貸物件で親族が亡くなった場合、遺族がまず取るべき行動とは

おはようございます。名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八行政書士事務所の谷です。

4月になりました。新年度の始まりは、進学・就職・転勤など生活環境が大きく変わる時期です。それと同時に、この時期は自殺件数が増加する傾向があることが統計的にも知られています。

当事務所にも毎年この時期になると、「賃貸物件で家族が亡くなってしまった」「突然のことで何をすればよいかわからない」といった相談が増えます。

今回は、賃貸物件で親族が自殺で亡くなってしまった場合に、遺族として最初に何をすべきか、何に注意すべきかを、実際の相談対応の経験をもとに整理してお伝えします。

まず最初に──「慌てて動かない」ことが一番大切です

事故物件の相談で、後になって一番後悔されているのが「慌てて動いてしまった」ケースです。

大家さんや管理会社から「早く部屋を片付けてほしい」と急かされたり、気が動転したまま遺品整理業者に依頼してしまったりすることで、後から取り返しのつかない状況に陥ることがあります。

まずは深呼吸して、今の状況を整理することから始めましょう。

①警察から連絡が入った段階でやること

賃貸物件で自殺が発生した場合、まず警察が現場を確認し、事件性の有無を調査します。その後、親族や関係者へ連絡が入ります。

この段階で確認すべきことは以下の3点です。

連絡を受けた自分は相続人なのかどうか
警察からの連絡は、必ずしも相続人に最初に入るとは限りません。故人の子ではなく兄弟に連絡が入るケースもあります。自分が相続人なのか否かをまず確認してください。

故人の遺体を引き取るか否か
遺体の引き取りは義務ではありません。故人との関係や諸事情によっては、引き取りを断ることも選択肢のひとつです。なお、「葬儀を行った=相続した」ということにはなりませんので、相続放棄を考えている場合でも葬儀は可能です。ただし、故人の預貯金で葬儀費用を支払うことは相続放棄に影響する可能性がありますので注意が必要です。

貸主・管理会社への連絡のタイミング
賃貸物件の貸主や管理会社への連絡は、現場の状況や発見時の状況によって適切なタイミングが異なります。焦って連絡を入れると、そのまま原状回復費用などの交渉に引き込まれてしまうこともあります。まずは状況を整理してから専門家に相談した上で連絡することをお勧めします。

②故人の財産状況を確認する

相続するかどうかを判断するために、故人の財産状況を確認します。

注意が必要なのは、預貯金などのプラスの財産だけでなく、消費者金融などからの借入などマイナスの財産も確認する必要があるという点です。

賃貸物件で自殺が起きた場合は、貸主側から多額の原状回復費用や損害賠償(逸失利益)が請求されることがあります。これらも事実上のマイナスの財産となりますので、貸主側からどの程度の請求が予想されるかも含めて財産状況を把握することが大切です。

生命保険は相続放棄と関係なく受け取れるケースがほとんどです。故人が生命保険に加入していた場合は、相続放棄をしても保険金を受け取れることが多いため、加入状況は必ず確認しておきましょう。

③相続するか・相続放棄するかの方針を決める

財産状況がある程度把握できたら、相続するか相続放棄するかの大まかな方針を決めます。

自殺が起きた賃貸物件では、特殊清掃や原状回復に高額な費用がかかるケースが少なくありません。また、孤独死と異なり、自殺の場合は「心理的瑕疵」の問題が加わるため、逸失利益(その後入居者が決まりにくくなることによる損害)の賠償を求められることもあります。

相続放棄は、故人の死亡を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。この期限を過ぎると原則として相続放棄はできなくなりますので、迷っている場合は早めに専門家に相談することをお勧めします。

④貸主側との原状回復費用等の協議

相続することを決めた場合、あるいは相続放棄はするが遺品整理だけ行う場合は、貸主側との費用負担に関する協議が必要になります。

ここで一つ覚えておいていただきたいのは、「貸主から提示された金額はあくまで貸主側の希望金額である」ということです。

事故物件における損害賠償の統一ルールはなく、当事者間の協議で決まるのが実情です。貸主の中には、古くなった設備の修繕費用まで請求してくるケースもあります。請求内容に疑問を感じた場合は、必ず専門家に確認するようにしてください。

また、交渉が難航した場合には「相続放棄」が強力な切り札になります。相続放棄をされると、貸主側は遺族に一切の費用を請求できなくなるため、ある程度の交渉力を持って臨むことができます。

⑤協議が整ったら「合意書」を作成する

貸主側との協議が整ったら、その内容を必ず書面(合意書)にしておきましょう。

口頭だけの合意では、後から「言った・言わない」のトラブルになりがちです。合意書は後日の紛争防止に非常に有効であり、万が一問題が生じた場合でも証拠として機能します。

⑥相続放棄をしつつ遺品整理を行う場合の注意点

「相続放棄はするけれど、貸主に迷惑をかけないために遺品整理だけはしておきたい」という方は少なくありません。しかし、相続放棄をしている状態で誤った遺品整理を行うと、相続放棄が後から取り消されてしまうリスクがあります。

特に注意が必要なのは次のケースです。

  • ・故人の家財を一般的な遺品整理と同様に処分してしまうこと
  • ・遺品整理業者による買取と遺品整理費用の相殺を行ってしまうこと
  • ・故人の預貯金や財布の現金を遺品整理等の支払いに使ってしまうこと

相続放棄をしながら遺品整理を行う場合は、必ず専門家の監督のもとで行うようにしてください。一般の遺品整理業者は相続放棄についての知識がないことがほとんどで、後から相続放棄が取り消しになったとしても業者は責任を持ってはくれません。

連帯保証人と緊急連絡先の違い

連帯保証人
・借主と同等の法的責任を負う
・事故発生時には、未払い賃料・原状回復費・逸失利益などの損害賠償義務が発生する
相続放棄をしても連帯保証人としての義務は残るため、自殺によって生じた責任を免れることはできない
・2020年4月1日以降の契約には改正民法が適用され、負担の上限となる「極度額」が設定されている

緊急連絡先
万が一の際の連絡先であり、連帯保証人のような法的責任を負うものではない
・自分の意思で署名・捺印していない場合は連帯保証人とはならない
・賃料の未払いや損害賠償の支払い義務は原則として生じない

実務上の注意点

入居希望者が親族に内緒で連帯保証人として家族の名前を書いているケースも少なくありません。事故発生後に管理会社や貸主から連絡が入った際、自分が「連帯保証人」なのか「緊急連絡先」なのかによって、その後の法的責任の有無が大きく変わってきます。必ず契約書の記載を確認することが重要です。

まとめ

賃貸物件で親族が自殺で亡くなってしまった場合の対処を、時系列で整理すると次のようになります。

  1. 慌てて動かず、まず状況を把握する
  2. 警察対応・遺体の引き取り判断・貸主への連絡タイミングを検討する
  3. 故人の財産(生命保険含む)と貸主側からの請求予定額を確認する
  4. 相続するか・相続放棄するかの方針を決める(3ヶ月以内)
  5. 貸主側と原状回復費用等について協議する
  6. 協議内容を合意書に残す
  7. 専門家の監督のもとで遺品整理・特殊清掃を進める

突然の出来事で頭が真っ白になってしまうのは当然のことです。しかし、焦って行動することで余計なトラブルを招いてしまうケースを、私はこれまで数多く見てきました。

何か不安なことがあれば、まずはご相談ください。当事務所では個別の案件についても無料相談を承っております。

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