原状回復にかかる判例【事例27】
[事例27]
通常損耗を賃借人の負担とし、解約手数料を賃借人の負担とする特約が消費者契約法により
無効とされた事例
京都地方裁判所判決 平成19年6月1日
〔敷金20万円 返還20万円〕
1 事案の概要
(原告:賃借人X 被告:賃貸人Y)
賃借人Xは、賃貸人Yと平成12年5月、月額賃料4万1000円で賃貸借契約を締結し、保証金20万円を差入れた。
本件契約書には、賃借人が本件契約を解約した場合に解約手数料として賃料の2か月相当額を支払う旨の特約(解約手数料特約)と、本件物件の汚破損、損耗又は附属設備の模様替えその他一切の変更について、賃借人が負担するとの特約(原状回復特約)が付された。
本件契約は平成14年6月に更新された後、賃借人Xが平成16年4月20日に解約申入れをして終了し明け渡したが、賃貸人Yは本件特約条項に基づき、解約手数料として4万4000円、原状回復費用として9万9780円を、その他清掃代として3万円を保証金から差引く旨通知した。
これに対して、賃借人Xは本件特約がいずれも消費者契約法等に反して無効であり、清掃については特に汚損をしていないこと等を理由に負担しないと主張し、保証金の返還を求めて提訴した。
一審(京都簡易裁判所)は、賃借人Xの請求を認めたが、賃貸人Yはこれを不服として控訴 し、併せて、未払更新料4万1000円の反訴請求がなされた。
2 判決の要旨
これに対して裁判所は、
(1)解約手数料特約について、本件契約の終了により本件物件が空室となることによる損失
を填補する趣旨の金員を解して中途解約に伴う違約金条項と解釈して、本件契約が解約
申入れから45日間継続するとされていることを指摘し、本件中途解約による損害が賃
貸人Yに生じるとは認められず、消費者契約法9条1号により無効であるとした。
(2)原状回復特約については、本件契約が平成14年6月1日に更新されていることから、消
費者契約法の適用があることを指摘し、通常の使用による損耗に対する原状回復費用を
賃借人の負担とする部分は、賃借人の義務を加重し、信義則に反して賃借人の利益を一
方的に害するものであるから、消費者契約法10条により無効であるとした。
(3)以上から、トイレ・エアコン・キッチン等の清掃費用については、賃借人Xには通常の
使用による損耗を原状回復する義務はないとした。