原状回復にかかる判例【事例5】
[事例5]
賃貸借契約書に約定されていた畳表の取替え費用のみが修繕費用として認められた事例
仙台簡易裁判所判決 平成7年3月27日
〔敷金0円 追加支払2万7000円〕
1 事案の概要
(原告:管理受託者X 被告:賃借人Y)
賃借人Yは、平成2年3月賃貸人訴外Aから仙台市内のアパートを賃料4万8000円で賃借し、平成6年4月合意解除した。
訴外Aから本件建物の保守管理を委託されていた管理受託者Xは、賃借人Yの退去後、次の修理を行い、その費用(22万8200円)を支出したとして、賃借人Yに対し不当利得の返還請求を求めた。なお、契約書には、賃借人は畳表の取替えを負担する旨、また、賃借人の責めに帰すべき事由でこの物件を汚損したときは、賃借人は、直ちに原状に回復しなければならない旨規定されていた。
イ 和室壁張替え 4万6400円
ロ 洋室壁張替え 5万6000円
ハ 玄関台所壁張替え 6万8800円
ニ 畳表取替え 2万7000円
ホ 諸経費 3万円
2 判決の要旨
これに対して裁判所は、
(1)契約条項によれば、畳表取替え費用は賃借人Yの負担すべきものと認められる。
(2)壁の汚損は、賃借人Yの責めに帰すべき事由というよりも、むしろ、湿気、日照、通風
の有無、年月の経過によるものと認められ、壁の張替えの費用は賃貸人の負担に属す
る。
(3)以上から、管理受託者Xの請求のうち、畳表替えの費用のみ認め、その余は失当である
として棄却した。