遺産分割協議参加者に関する疑問
遺産分割協議に参加しないといけないのは誰ですか?
遺産分割協議に参加する者とは誰のことを指すのか?
遺産分割協議に参加するのは原則法定相続人になります。
しかし、遺言で包括遺贈を受けた者がいる場合や相続人から相続分を受けた者がいるなど法定相続人以外の者が遺産分割協議に参加する場合もあります。
※特定遺贈と包括遺贈
特定遺贈とは、遺言で「○○の土地を遺贈する」などのように遺贈される目的物が特定
されている場合が特定遺贈となります。
これに対して包括遺贈とは「遺産の1/3を遺贈する」などのように財産を特定せずに割
合で遺贈する財産を決める場合を言います。
共同相続人の一部の者だけで行った遺産分割協議はどうなりますか?
無効となります。
遺産分割協議に相続人の内1人でも参加させないで遺産分割協議を行った場合はその遺産分割協議は無効となります。
これは、不参加者がいることを知っていながら分割協議を行った場合に限らず、共同相続人の誰1人として、自分達以外に相続人がいることを知らなかった場合でも同様です。
たとえば、故人に認知した隠し子がいたとして、その子供の事を誰もしらなかった場合などです。
ですので、遺産分割協議を行う前に故人の出生から死亡までの戸籍を調査して故人の相続人を確定することがとても重要となります。認知された隠し子などがいた場合は故人の戸籍に記載されますので、戸籍謄本等を取り寄せれば相続人は判明します。
もし、相続人調査を怠り、遺産分割を成立させたとしても、後日、隠し子などの本来遺産分割協議に参加すべきだった者から遺産分割協議のやり直しを請求された場合はやり直しをしなくてはならなくなります。
※死後認知のように相続の開始後に相続人としての地位を手にいれた者に関しては、既
に完了している遺産分割のやり直しを請求をする事はできず、自己の相続分に応じた
価額(お金)を請求できるにとどまります。
遺産分割協議参加者の中に行方不明者や音信不通者がいる場合
相続人の中に行方不明者や長年音信不通の者がいたとしても、それらの者達を除いた遺産分割協議はやはり無効となります。ではどうすればいいのか?
相続人の確定作業を行う際には必ず戸籍の調査を行い相続人を確定いたします。その際に長年行方不明だったり、音信不通の方などが相続人として出てくることは珍しくはありません。
そうした場合は、まずは戸籍調査で判明した音信不通者等の本籍地へ「戸籍の附票」を請求してみましょう。
戸籍の附票には、戸籍に記載されている者(音信不通者等)の住所の移転の履歴が記載されています。
ですので、音信不通ではあるけれども、その方が普通に生活しているならば、役場へ住民票の届けを行っていますので、そうした転出や転入の届出がきちんとされている方ならば現在の住所地を確認することは戸籍の附票から行うことが可能となります。
相続人の調査に必要な戸籍の取得や附票の請求先などは、故人や相続人の方が転籍を繰り返しているようなケースですとかなり難解な作業を伴うこともございます。
相続人の調査他、長年疎遠な相続人への連絡などでお困りの際は当事務所は代行で行うことも可能ですのでご相談ください。
そうした、戸籍調査でもまったく行方が知れないようなケースでは下記のような手続きに移行する必要が出てきます。
<行方不明者がいる場合>
行方不明者が7年以上生死が不明な場合は、その他の相続人などから家庭裁判所に対し て失踪宣告を出してもらう方法があります。
失踪宣告がなされると、行方不明者は生死不明の時から7年経過した時点で死亡したも
のとみなされますので、その死亡の時点が被相続人(故人)の死亡より後なら、行
方不明者が一旦相続したことになりますので、行方不明者の相続人が分割協議の参
加者となり、被相続人(故人)の死亡より前となるなら、行方不明者の代襲相続人が
分割協議の参加者となります。
<音信不通者がいる場合>
行方不明者の中で7年経過していない者や、生存していることは確かだけど、今どこに
いるのかわからないし、連絡も取れないといった相続人がいる場合もあります。
そのような場合は家庭裁判所に不在者の財産管理人を選任してもらう手続きを取ること
になります。
不在者の財産管理人は不在者の財産に対して保存行為や利用・改良行為を行うことはで
きますが、処分行為を行う場合には家庭裁判所の許可がいります。
したがって、不在者の財産の処分とされる遺産分割協議を行うには、家庭裁判所に不在
者の財産管理人を選任してもらい。不在者の財産管理人は処分行為に対する家庭裁判所
の許可を受けた上で遺産分割協議に参加することになります。
遺産分割協議者の中に未成年者がいる場合
遺産分割協議を行う者の中に未成年者がいる場合、未成年者は単独では有効な法律行為が行えませんので、誰かに代理してもらう必要があります。
通常未成年者の代理行為は親権者である両親が行うことになりますが、相続の場合はその親権者も子供と同じ相続人の地位にいる場合があります。
そのような相続人としての地位を持っている親権者が同じ相続人である子供に代わって遺産分割協議を行ってしまうと、親権者が子供の利益を自分の利益としてしまう(利益相反行為)危険性があります。
たとえば、父が亡くなった場合に母と子(未成年)が相続人になった場合に母が子供を代理して遺産分割協議をする行為は利益相反となりますので許されません。
しかし、子供(未成年者)から見て祖父が亡くなった場合で、子供の父が祖父の死亡以前に亡くなっていた場合は代襲相続が発生します。この場合、母は原則相続人にはなりませんので子供を代理して遺産分割協議に参加することができます。
このように利益相反行為に該当する遺産分割協議を行う場合は、親権者に代わって未成年者を代理する特別代理人の選任を家庭裁判所に請求することになります。
もし、未成年者がいるにも関わらず特別代理人を選任せず親権者が未成年者に代わって遺産分割協議を行った場合は無権代理行為(権限がないのに代理したということ)となり、未成年者が成人に達した後に追認(無権代理行為を有効と認めるということ)しない限り無効となります。
※親権者が未成年の子より先に相続放棄した場合は利益相反行為になりませんので未成年
者の代理を行うことが可能となります。
また、未成年者と同時に相続放棄をする場合も同じく利益相反行為とはなりませんの
で、親権者が相続放棄の手続きをすることが可能となります。
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