原状回復にかかる判例【事例35】
[事例35]
賃貸借契約終了時に敷金から控除された原状回復費用について賃借人の返還請求が一部認め
られた事例
東京地方裁判所判決 平成21年7月22日
一審・東京簡易裁判所判決
〔敷金51万3000円 返還43万5510円〕
1 事案の概要
(原告:賃借人X 被告:賃貸人Y)
賃借人Xが、賃貸人Yに対して賃貸借契約が終了したことから敷金51万3000円の支払を求めたところ、賃貸人Yが、契約書上「経年以外の部分で乙(入居者のこと)の責めに帰する汚損・破損に関し乙の費用をもって遅滞なく原状回復の措置をとり、本物件を明け渡すものとする」との条項があることから、下記の金額については賃借人Xの責めに帰すべき汚損の原状回復のための費用支出であるから、敷金から控除されるべきと主張した。
そこで賃借人Xが賃貸人Yに対して敷金51万3000円の返還を求め提訴した。
(ア) フローリング補修張替え(6枚分) 15万円
(イ) 框戸の取替え 7万5000円
(ウ) ダン襖片面張替え 3800円
(エ) LD天井シーリングプレート取付け 5600円
(オ) 和室畳一畳張替え 1万4000円
(カ) ビニールクロス張替え 4万円
(キ) ハウスクリーニング 5万7800円
(ク) 網戸張替え 1万3000円
(ケ) 洗面化粧台ボール取替え 7万円
(コ) UBフタ取付け 9000円
合計43万8200円に消費税2万1910円を加えた46万110円
2 判決の要旨
これに対して裁判所は、
(1)上記費用のうち以下の費用を賃借人Xの負担すべき原状回復費用であると認め、賃貸人
Yに対して51万3000円から合計金額7万7490円を控除した43万5510円およびこれに
対する遅延損害金の支払を命ずる判決を言い渡した。
(ア)については2枚分5万円、(カ)については半額に相当する2万円、(ウ)につい
ては3800円以上合計7万7490円(消費税込み)
これに対し、賃貸人Yが控訴し、以下のとおりの主張をした。
①(イ)(エ)(オ)(キ)(ク)(ケ)(コ)の費用は賃借人Xが負担すべきであ
る。
②以下の費用については一部でなく全部認められるべきである。
(ア)については2枚分ではなく6枚分。
(カ)としては2万円ではなく4万円。
③その他
外廊下長尺シートの損傷を補修するための費用を賃借人に負担させるべき。
これに対して裁判所は、
(1)本件全証拠によっても、(イ)、(エ)、(オ)、(キ)、(ク)、(ケ)、(コ)お
よび外廊下長尺シートの補修費用が「経年以外の部分で賃借人の責めに帰する汚損・破
損」を補修するための費用であると認めるには足りない。
(2)(ア)、(カ)についても原判決が認定した範囲を超えて賃借人Xが負担すべきことを
認めるに足りない。
(3)以上から、原判決は相当であるとして本件控訴を棄却した。