名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ
2015.03.03
士業の常識は世間の非常識
おはようございます。名古屋市の遺品整理・特殊清掃専門第八行政書士事務所の谷です。
昨日は非常に暖かな一日の名古屋でした。階段作業で久々に汗だくになり春の到来を感じる今日この頃です。階段作業をしているとこの作業が夏でなくて良かったと思ってしまいます
さてさて、先日作業中に頂いたご相談がちょっと目から鱗というか、まだまだ一般の方々の目線に立てていないんだなということを実感させてくださいましたのでちょっとご紹介。
その電話は遺品整理の片付けを行っていた時に掛かってきた相続放棄と遺品整理に関するご相談でした。ご相談者が話されるには、生活保護を受けている父親が亡くなり、役場より連絡が入ったそうです。
ご相談者の方は娘様だったのですが、ご両親は離婚しており父親とはほぼ絶縁関係でなるべく関わりあいたくなかったそうなのですが、火葬するにあたりどうしても相続人のサインがいるとのことで役場の方に説得されたそうです。
その際に相続はしたくないので、火葬に関する書類にサインしても影響はないですか?と何度も確認は取られており、役場の方も相続放棄には影響はないですよと話されていたそうです。
それと同時に父親が住んでいた賃貸物件にかなりの現金があったことや孤独死のため不動産会社より原状回復の話しもあるだろうということは聞いていたらしく、不動産会社の人も清掃費でだいたい100万くらい掛かるとその時は言っていたそうです。
ただ、部屋に残されていた現金が請求予定額以上あったらしく、そこから払えばいいのかな?と考えていたらしく、火葬に関する書類に署名をした以降はしばらく状況を確認せずにいたそうです。
そうこうしている内に父親が亡くなってから1年程が経過していい加減連絡も無くておかしいなと思っていた頃に不動産会社より当初聞いていた原状回復費用以上の請求が来てビックリして当事務所へ相談されたという流れだったようです。
最初のご相談としては、父親の部屋にあった現金や荷物を何も引き受けていない自分達が不動産会社の請求に応じなければいけないのか?というものでした。
ご相談者の方は「相続するつもりはなかったので火葬の署名の際も何度も役場の人に確認したのですから、、、、、」と仰っていたのですが、私が「家庭裁判所で相続放棄の手続きは取られましたか?」と聞くと、「そんな裁判所なんてだいそれたものはなにもしていません」と仰います。
そうなんです、これを聞いて私は頭をガツンとされた気分でした。私達のような士業を生業とする人間からすれば相続放棄=家庭裁判所へ放棄の申述という構図が出来上がっており当たり前に感じますが、一般の方にとっては相続放棄なんて馴染みのない作業はそもそもどこかに申立てが必要とは考えないこともあるということです。
このご相談者の方も父親の物をなにも引き継がなければ相続放棄したものとの思い込みがあったようで家庭裁判所に対する相続放棄の手続きを何もされていないとのことでした。
そうなると、相続放棄の熟慮期間である3ヶ月は既に経過してしまっていることになりますので、原則相続を承認してしまっていることになります。
ですので、亡くなられたお父様の権利義務は相続人たる相談者の方が相続していることになりますので、不動産会社からの原状回復費用についても支払い義務が出てくる可能性があります。
ただ、期間経過後の相続放棄が必ずしも認められないとは限りません。故人の借金が後から発見されたような場合で相続人が相続放棄の手続きをしていなくてもしかたがないと思われるような特別な事情が認められれば熟慮期間経過後でも相続放棄が認められる場合があります。(今回の件は負債自体は最初から分っていたので難しいかもしれませんが)
もし、相続放棄が認められれば不動産会社からの原状回復費等の請求には応じなくて良くなりますので、一度相続放棄を専門に取り扱われている司法書士や弁護士の先生にご相談されてみることをご相談者にはお勧めして電話相談は終了しました。
遺品整理や士業の仕事に携わっていると当たり前のように接する相続放棄に関する事柄でも、一般の方にとっては当たり前ではない「士業の常識は世間の非常識」ということを肝に銘じて、わかりやすい説明を今後も心がけていきたいと思います。
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