名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ

2015.11.16

遺品整理の費用は故人の預貯金から支払える?

 おはようございます。名古屋の遺品整理・特殊清掃専門第八行政書士事務所の谷です。

もう11月も半分終わってしまいましたね。最近は灯油の移動販売の声も聞こえ始め冬の到来を感じさせています。

さて、先日お手伝いした遺品整理の見積もりの際のご相談。相続放棄をするつもりだが、故人の預貯金にある程度のお金が残っているので、このお金で葬儀代や遺品整理費用は支払っても大丈夫か?という質問です。

遺品整理のご質問の中、特に相続放棄をされる方が遺品整理をされる際に良く頂くご質問です。

まず大前提として、相続放棄をされる方は故人の財産を承継することはできません。この承継する財産にはプラスの財産もマイナスの財産も含まれており、プラスの財産だけや相続財産の内の一部だけ相続したり放棄したりといったことは出来ません。言ってみれば0か100かということです。
(※限定承認というプラスの財産の範囲内で借金などの負債を支払い、相続人の資産に影響を与えない
方式の相続方法もありますが、相続放棄に比べて手続きと要件が複雑なのであまり利用されてはいません。)

では、葬儀代や遺品整理の費用は相続人が自腹を切るしかないのか?というと、葬儀費用については過去に判例が出ています。

大阪高等裁判所平成14年7月3日決定
葬儀は、人生最後の儀式として執り行われるものであり、社会的儀式として必要性が高いものである。そして、その時期を予想することは困難であり、葬儀を執り行うためには、必ず相当額の支出を伴うものである。

これらの点からすれば、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬式費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。また、相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば、むしろ非常識な結果といわざるを得ないものである。

したがって、相続財産から葬儀費用を支出する行為は、法定単純承認たる「相続財産の処分」(民法921条1号)には当たらないというべきである。

簡単に言うなら、人がいつ死ぬかは分らないし、死んだ場合は葬儀にお金が掛かるのは当然で、その費用を故人の財産から支払うことはあたりまえのこと。
また、故人の残した財産が使えず費用を捻出できないから葬儀もあげませんとなるとそれこそ非常識ですよね。
だから、故人の残した財産から葬儀費用を出しても相続放棄には影響ないですよ。ということです。

ただし、葬儀費用は相続放棄に影響がないからといって、いくらでも豪華な葬儀を挙げでもOKとはなりません。その亡くなられた方の社会的身分などに合わせた身分相応な葬儀ならその費用は故人の残した財産から支払っても問題ないという考え方です。

なるほど葬儀費用は判った。なら遺品整理の費用は?となるとちょっと事情が異なってきます。
遺品整理の費用を故人の預貯金から支払った場合に相続放棄に影響があるかどうかについては判例が確認できていません。ですので、実際に裁判で争われた場合にどのような判断が下されるのかについてはその時になってみないとわからないというのが実情です。

ただ、前述のように故人の残した財産は一切承継できないとするのが相続放棄の大前提であり、葬儀費用はあくまで社会的見地に立って考えた場合に例外的に認められているものです。

ですので、遺品整理の費用も葬儀費用と同じだろうと考えて故人の残した預貯金から支出してしまうと相続放棄に影響が出てくる可能性があります。

したがって、相続放棄を予定している方が遺品整理の費用を支払う必要があるのなら故人の預貯金には手を付けずに、自分のお財布から支払うようにする方が安全だと言えます。

葬儀費用に限らず、相続放棄を予定している方が遺品整理を行う場合は未払い家賃や公共料金の支払い、電話の解約や借金の督促など色々と注意をしながら進めていかなければいけないことが沢山ございます。

何をどのように進めたらいいのか判らない!!という場合は是非ご相談くださいね。
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名古屋の遺品整理・特殊清掃専門 第八行政書士事務所 代表 谷 茂

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