名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ

2017.10.23

ゴミ屋敷で孤独死、連帯保証人の責任は?

おはようございます。名古屋の遺品整理・特殊清掃専門第八行政書士事務所の谷です。

今日の名古屋は台風21号が過ぎ去り朝から良い天気です。(ただし風が強い!)洗濯物が干せそうですが、同時に洗濯物が飛んでいきそうでちょっと心配。穏やかな秋はまだですかね~

さてさて、先日こんなご相談を受けました。「家族が賃貸アパートで孤独死をして私は連帯保証人です。管理会社から約250万の原状回復を請求されているのですが、これは支払わないといけないのでしょうか?」

というご相談内容。最近の賃貸契約では家賃の保証会社との契約が部屋を借りる際の条件となっている事も多いですが、入居期間が長い方だとまだまだ連帯保証人がいるケースがほとんどです。

家賃の保証会社がついている場合は基本的にご家族は連帯保証人にはなられてはいないでしょうから、相続放棄という手段をもって原状回復費等の支払いを断ることは可能です。(ただし、故人のプラスの財産も引き継げなくなりますが)

しかし、今回のように賃貸契約の際の連帯保証人となっているような場合は例え相続放棄をしたとしても連帯保証人としての立場は残ることとなりますので、連帯保証人として故人が住んでいた部屋の明け渡し義務を果たさなければいけません。

当然部屋を明け渡す以上は室内の残地物を撤去して契約時に取り決めていた通りの清掃費や原状回復費用等を当初預けていた敷金などから清算を行う必要が出てきます。

毎年2月~4月頃はTVや雑誌などでも「敷金はこうすれば取り戻せる!」などの見出しで特集が組まれるほど、この問題は頻繁に起こっているわけですが、一般的な退去であってもこれだけ問題になるのに、退去の理由が入居者の死亡、それも孤独死となると話しがさらに複雑化してくるという訳です。

今回のご相談者の方の話しを聞いてみると、故人は室内で孤独死、室内はゴミ屋敷状態で放置期間は夏場という季節を考えれば腐敗が出る期間、相談者は連帯保証人になっており、原状回復の請求はあるが、逸失利益の請求はなし。ということでした。

通常と言っていいのか悩みますが、普通の孤独死の場合ですと故人には故意も過失もないことから相続人や連帯保証人には孤独死を原因とした原状回復費用は請求できないとする考え方があります。(反対の意見もあります)

ただし、それは孤独死を原因とした、例えば長期間放置された事による臭いや床の染みといった部分についてであり、今回のように普段の生活状態からしてゴミ屋敷状態だった場合は故人が孤独死せずに普通に退去した場合であっても原状回復費用は発生した可能性があります。

なぜなら、室内の利用において一般的に行われる清掃もせずに食べこぼしや飲み残しなどで床や壁に染みを作っていたとしたら、それは明らかに入居者の過失なわけですから、入居者に責任があるということになるからです。

そうすると今回のご相談者の件でいうと、孤独死によって生じた汚れなどについては原状回復費用を支払う必要はないかもしれないが、ゴミ屋敷化していたことによって発生した汚れの部分については原状回復費用は発生すると考えられます。

特にゴミ屋敷化しているような部屋ですと、孤独死によって生じた汚れなのか、普段の溜め込んだゴミが原因で汚れたのか判然としないことも多く、大家さん側としては全てをマルッと請求してくるケースがほとんどでしょう。

では、今回の200万を越える原状回復費用は支払わないといけないのか?というと、もう一点考慮すべきことがあります。それは入居期間です。

確かに故人は室内をゴミ屋敷としてしまっていて原状回復費用が発生すると考えられます。しかし、ではその汚してしまった壁紙等にはいったいどれだけの価値が残っているのか?ということを考えなければいけません。

原状回復の問題でよく耳にする「経年劣化」の問題ですが、壁紙などは時間の経過と伴にその価値は減少しており、その価格については一般的に家賃に含まれているとの考えから、入居期間が長期になればなるほど原状回復の負担割合は大家側が大きくなるという考えです。

もっと、簡単に言えば壁紙などは普通に生活していても日焼けなどもするし、時間が経てば劣化するでしょ?別にわざと破ったり汚したりした訳でもないのだから普通に使用していて下がった価値は大家さんが負担するべきものですよ。ということです。
(原状回復については「
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をご確認ください)

これを今回のケースに当てはめるとどうなるのでしょうか。入居期間を確認したところ既に10年以上お住まいとのことです。そうであるなら大家側から提示されている見積もりの多くを占めているクロスの張替え費については大幅に減額できる可能性があります。

また、床の張替え、設備の取替えについても経過年数を考慮しない設備類であっても建物自体の耐用年数を考慮して残存価値を判断することができますので、こちらも減額交渉の余地があると思われます。

原状回復はなにも壁紙や設備を新品にして返せという訳ではありません。今まで何十年も交換していなかった設備を今回たまたま破損や汚してしまったからといって新品の代金全額を借主側が負担しなければいけないというのはおかしな話しですよね。

それまで、何十年と利用してきた経緯があるのにそれを考慮せずに新品の代金を借主側に請求するのは無理があります。もちろん、破損や汚れがなかったら交換せずに使い続ける事ができたという事も考えられますので、交換に掛かる工賃などは負担する必要があるでしょう。

簡単に言うなら、入居者側が交換しなければいけない原因を作ったのだから工賃は負担する必要がある。ただ、経年劣化している設備など耐用年数などから残存価値を計算した上で大家側と入居者側で金銭的な負担をする割合を決めるということです。

孤独死や自殺といった一般的に賃貸物件では事故として扱われるようなケースでは、事故と直接関係ない部屋や設備なども併せてリフォームの対象として請求されるケースが多く見受けられます。

これは、事故の部分と通常の生活からくる汚れなのか、入居者の過失によって生じた物なのかが判然としないことから起きてくることでもありますが、ケースによっては古くなった設備をこの機会にまとめて入居者側の負担でリフォームしようと考える大家さんもいたりしますので、困った場合はお近くの弁護士などの専門家に相談するようにしましょうね。

名古屋の遺品整理・特殊清掃専門 第八行政書士事務所 代表 谷 茂

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