名古屋の遺品整理・死後事務専門の第八ブログ
2018.05.20
相続放棄で放棄できない管理責任
おはようございます。名古屋の遺品整理・特殊清掃専門第八行政書士事務所の谷です。暑い!まだ5月なのに既に夜は蒸し暑く寝るのも大変!日本の四季は何処にいってしまったのやら、、、、、
まー、気温の話しはさておいて、先日のニュースで竹林の竹が上から降ってきて困る。というニュースを拝見しました。竹林を所有している高齢者が経済的な事情から管理を放棄してしまい、下に住む住人の生命が脅かされているという事案です。
空き家問題でも度々問題になる話題でもありますし、遺品整理の現場でも古い実家をどうすればいいのか?という相談を良く受けるところでもあります。
遺品整理の場面での相談ですと、被相続人(故人)の財産状況によっては相続放棄という選択肢も出てきます。特にこれからの暑い時期ですと、「高齢者」+「熱中症」+「孤独死」+「原状回復費」+「損害賠償」=「相続放棄」という流れが頻繁に出てきます。
これは何も賃貸物件に限った話しだけではなく、故人の自己所有していた不動産でも当てはまる問題でもあります。自己所有の土地、建物ですので原状回復費や損害賠償という問題はあまり気にしなくてもいいかもしれませんが、故人の遺産がプラスよりマイナスが多い場合は相続放棄を検討することになるでしょう。
では、相続放棄をしたとしてその空き家は誰が管理するのか?という問題が出てきます。相続放棄をしたのだから後は知らない!という訳にはいかないということです。
それは何故か?民法940条には次のような条文があります。
つまり、相続放棄をしても空き家を管理する人が現れない以上は相続放棄をした人が責任を負えよということです。そうなると、相続放棄をしたのだから私は一切関係ない!と思っていたとしても、その空き家が何かしら原因で倒壊などして隣地に損害を与えてしまったような場合は、相続放棄をした人であっても責任を負わされる可能性があるということです。
こうなってくると、相続放棄をしたから面倒事と一切関わらなくて良いという訳にはいかなくなってきますよね。ここで相続放棄をする際に注意して欲しい問題が見えてきます。
遺品整理のご相談を受けていると、「実家は価値もないし、プラスの財産もスズメの涙程度。いっそ相続放棄してしまった方がいいでしょうか?」というご相談。
確かに、その他の諸々の手続きや費用を考えると相続放棄をしてしまう方が簡単で後腐れがないかもしれません。しかし、相談者の方の相続順位や不動産の現状を考えると必ずしも相続放棄が最適解とはならないかもしれません。
相続放棄はご存知の通り、プラスの財産もマイナスの財産も一切合切放棄する手続きです。しかし、上で示した通り民法940条で相続放棄をした者であっても管理責任は残ります。
そうなると、相続放棄をしてプラスの財産は一切貰えてないのに、管理責任だけが残ってしまうというケースも出てくるわけですよね。そうであるならスズメの涙程度の財産でも貰っておいた方がいいのでは?という考えも出てきますし、もしかしたら状況が変わってその古い実家が「古民家カフェ」などで利用できたりするかもしれません。
もちろん、ケースバイケースですので、故人の残した負債(借金などのマイナスの財産)が多い場合は、まずは相続放棄をしてマイナスの財産は引き継がないようにして、不動産については管理責任だけを負担している方が賢い選択となることもあります。
今回はプラスの財産も貰えないのに管理責任だけ残ってしまうというケースにご注意をという意味で書かせていただいておりますので、よく似た話題での、いらない不動産は市町村に寄付できないの?やいらない不動産の所有権は放棄できないの?などは別の機会で。
名古屋の遺品整理・特殊清掃専門 第八行政書士事務所 代表 谷 茂
第八行政書士事務所は名古屋を中心に遺品整理・死後事務のご相談を受け付けております。
その他の地域にお住まいの方でも遺品整理や生前整理、相続相談、死後事務に関するご相談は随時お受け致しておりますのでお気軽にご相談くださいね。
相続放棄者の管理責任の範囲について(追記)
「相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」。
このように、相続放棄者は、相続放棄をしたことで空家について直ちに何の責任も負わなくなるということではなく、「相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで」、相続財産を管理する義務を負うこととされています。
相続放棄者は、民法940条により相続財産である空家を管理する義務を負うが、この義務は後に相続人となる者等に対する義務であり、地域住民などの第三者に対する義務ではないとの見解を示しています。
つまり、相続放棄した者が負う管理責任は後から相続人になる者に対しての管理責任であって、近隣住民等の第三者に対して負う管理責任ではないということ。
こうした見解があることにも注意が必要。