原状回復にかかる判例【事例21】
[事例21]
賃貸人は敷金の精算は管理会社に一任されると主張したが敷金から控除されるべき費用は
ないとされた事例
神戸簡易裁判所判決 平成15年4月10日
〔敷金24万6000円 返還17万226円〕
1 事案の概要
(原告:賃借人X 被告:賃貸人Y)
賃借人Xは、平成10年8月、賃貸人Yと月額賃料8万2000円で賃貸借契約を締結し、敷金24万6000円を差し入れた。
賃借人Xは、平成11年8月27日、本契約を賃貸人Yと合意解除し賃貸物件を賃貸人Yに明け渡したが、賃貸人Yは賃借人Xに対し、平成11年7月までの賃料を受領したのみであるとして、8月分の日割賃料・共益費7万8300円を敷金から控除するとした。更に、賃貸人Yは、賃借人Xが本件建物から退去する際は、30日前までに申し出たうえ、修繕費の査定のための検査を受ける義務があるのに、その検査を受けていないうえ、ルームチェックに立ち会うべきであるのに、立ち会っておらず、その場合はルームチェック清算を管理会社に一任するとされており、管理会社に修繕を依頼し、敷金全額の24万6000円を修繕費用に充当した。
これに対して、賃借人Xは敷金全額の返還を求めて提訴した。
2 判決の要旨
これに対して裁判所は、
(1)賃貸人Yは、平成11年7月までの賃料を受領したのみで、同年8月1日以降の賃料・公
益費の支払を受けていないことが認められる。したがって、賃貸人Yは本件の敷金から
賃借人Xが本件建物を明け渡した平成11年8月27日までの日割賃料・共益費7万5774
円を控除することができる。
(2)賃貸人Yにおいて本件敷金から控除するべき費用の項目、金額について具体的な主張が
全くないので、本件敷金から控除すべき費用はないものとせざるを得ない。
(3)以上から、賃借人Xに対する、本件敷金24万6000円から日割賃料・共益費7万5774円
を控除した17万226円の返還を認めた。